覚え書:「帰ってきたモンジロー 怖い!楽しい!お化け屋敷」、『朝日新聞』2016年08月10日(水)付。

Resize3921

        • -

帰ってきたモンジロー 怖い!楽しい!お化け屋敷
2016年8月10日

銚子電鉄のお化け屋敷電車。乗車後は、お化けたちと記念撮影する人の列ができる=千葉県銚子市
 
 くらしの中の「なぜ?」を探る「疑問解決モンジロー」が、この夏も帰って来ました。1回目は猛暑に背筋をヒヤリとさせてくれる「お化け屋敷」。怖いけど、なぜか入りたくなる夏の風物詩の魅力、探検してみたでござる。

 ■電車に商店街、にじむ愛

 最近、お化け屋敷が意外な場所で人気を集めているって聞いたよ。

 まずは昨夏、発売1週間でチケットが売り切れたという千葉県銚子市の「お化け屋敷電車」に乗ってみたでござる。地元銚子電鉄が、7、8月の週末を中心に、夜2便だけ運行している。

 関東の最東端、犬吠埼近くのひなびた駅に集合すると、まずは銚電名物の「ぬれせんべい」を焼き、ドキドキしながら電車を待つでござる。その後、窓からお化けの顔が浮かび上がる車両に乗り込み、市中心部までの片道約5キロを1時間弱で往復。明かりのない田園地帯を走る電車は、駅じゃない場所で止まり、裸電球がチカチカ点滅するだけで相当怖い。その上あんなことがあれば……、ウキーッ!

 これ以上はネタバレになるので、興味があれば28日まで運行の電車に乗ってみて!

 続いては2012年に始まり、毎夏、約2万人を集めると話題の岐阜市柳ケ瀬商店街の「恐怖の細道」。かつて映画館だった建物に昭和の柳ケ瀬の街並みを再現。中に入ると、同市発祥とも言われる都市伝説の「口裂(さ)け女」が追いかけてくる……。ウギーッ、怖すぎる!

 でも、行列ができる人気になっていて、口裂け女がイベントを開くなど、盛り上がりがお化け屋敷の外にも広がっているよ。

 二つのお化け屋敷に共通するのが、怖さの中にもにじみ出る「地元愛」だったッキ。

 銚電の車内で語られる物語は、怪談蒐集(しゅうしゅう)家の寺井広樹さん(36)に頼んで、港町を歩いて話を聞き込んでもらったものがベース。ここだけの話、お化けの正体も、経営難の銚電を応援する地元の大学生や高校生たちなんだ。

 柳ケ瀬の場合は、地元の経営者有志によるまちづくり団体「やながもん」が、往時の3分の1ほどの店舗数になった地元商店街に、もう一度子どもたちがワクワクするにぎわいを取り戻したいと立ち上がったもの。広報担当の稲垣康雄さん(47)によると、建設や空調工事など、メンバーそれぞれの専門技術を生かした手作りなんだ。

 そう言えばあれだけ脅かされても、何だか一生懸命さが伝わってきて、終了後の商店街や電車前は、お化けと記念撮影する人でいっぱいになったッキ。リピーターも多いそうで「怖いのに町おこしになる」(稲垣さん)というのも、うなずけるでござるよ。

 ■起源は江戸の芝居小屋

 そもそも、日本のお化け屋敷はいつ始まったんだろう?

 「化物(ばけもの)屋敷」の著作がある橋爪紳也大阪府立大教授(都市文化論)によると、起源は江戸時代、大衆文化が花開いた寛政から文化・文政期にさかのぼるでござるよ。

 当時人気のあった歌舞伎などの芝居小屋も、暑い夏は客入りが悪くなった。そこで、後に「東海道四谷怪談」をヒットさせる鶴屋南北らが一計を案じ、妖怪や幽霊が早変わりなどで客を驚かす新作狂言を発表し、大評判になったんだって。夏にゾーッとする話を聞きたくなるのは、昔の人も同じだったんだねぇ。

 以降、コワーイ話が夏の芝居小屋の定番となり、庶民の間でも肝試しや百物語が流行。1836(天保7)年には、江戸の見世物興行の名所、両国の回向院に、歌舞伎の怪異談の名場面を人形や仕掛けを駆使して再現する「怪物問屋」が登場した。橋爪さんは、これが現在のお化け屋敷の原型とみているよ。

 大正時代から創業90年以上という業界の老舗があると聞いて、栃木県佐野市の丸山工芸社を訪ねてみた。代表の柳誠さん(71)はどこかな……。キキーッ、「お化け」に囲まれてる! 近くの道の駅「どまんなか たぬま」のお化け屋敷用の人形を作っている真っ最中だったんだ。

 柳さんの母親の実家は、江戸時代から続く幽霊人形芝居の一座。そんな母が、元日本郵船社員で海外で博覧会などの見聞を広めてきた父親と結婚。浅草・花やしきや後楽園など多くの遊園地のお化け屋敷を手がけてきたんだって。

 物心つく頃からお化け作りを手伝ってきた柳さんによると、機材がどんなにハイテクになっても、変わらないお化け屋敷の魅力は、「中での緊張感と外に出た時の安心感の落差で、人間関係がより深まる」こと。カップルや親子連れが肩を寄せ合って家路につくのを見ると、とてもやりがいを感じるそうでござる。

 そういえばモンジロー以外は、みんな誰かと一緒に来てたなー。よし、次は勇気を出して、幼なじみのモン子を誘ってみるでござるか。ドキドキ。今年一番の肝試しだったりして。

 ◆全3回掲載します。次回は11日で、「青春18きっぷ」の予定です。
    −−「帰ってきたモンジロー 怖い!楽しい!お化け屋敷」、『朝日新聞』2016年08月10日(水)付。

        • -


http://www.asahi.com/articles/DA3S12504718.html





Resize3786

Resize3176