覚え書:「著者に会いたい 五味太郎絵本図録 五味太郎さん [文]塩原賢」、『朝日新聞』2016年10月09日(日)付。

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著者に会いたい
五味太郎絵本図録 五味太郎さん
[文]塩原賢  [掲載]2016年10月09日

五味太郎絵本図録」の著者、五味太郎さん=山本和生撮影
 
■「おー!」って思っていたい

 『みんなうんち』『さる・るるる』など、多くの人が一度は楽しんだ絵本を1973年から400作近く描いてきた。そのほとんどが書店の棚に並び続ける。約30カ国で親しまれる世界的な絵本作家の軌跡を、本人のエッセーや書き下ろし作のほか、俵万智吉本ばなならのメッセージとともにまとめた。
 広告や工業デザイン、運転手……。様々な職業を経て、『みち』を児童書専門の福音館書店に持ち込んで絵本作家に。「福音館や偕成社文化出版局……いい出版社との出会いがあった。今があるのは運の良さ」。いい本を作れば結果はついてくる。そんな考えの出版社ばかりだ。一方で大手出版社を中心に、大量に作って宣伝し、「生産性」を上げようとしている様子が気にかかる。「一般産業と変わらなくなってきた。『コンシューマーのニーズにお応えする本』なんて描けないよ」
 想定する読者は、自分。「自分が『おー!』って思えば、ほかにも『おー!』って思う人はいる。だって、世の中には人がいっぱいいるんだよ」。理由はシンプルだ。
 本著で、絵本の可能性を「軽いことの許容力、浅いことの自在さ」と書く。「学問も歴史を重ね、政治も民主主義が生まれ戦争も経験した。まず個人があって、その連合体として社会があるはずなのに、今は逆転している。今の社会はなに?重厚で深いことに価値があるってウソじゃない?と思うわけ」と語る。「重厚な価値観」で判断するのではなく、まず自分で考え感じて欲しいと思う。「子どもたちは『ぼくはね、私はね、ここが面白かったよ』って言うんだよ。それが大きくなるとできなくなるんだな」
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 青幻舎・3024円
    −−「著者に会いたい 五味太郎絵本図録 五味太郎さん [文]塩原賢」、『朝日新聞』2016年10月09日(日)付。

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