覚え書:「街頭政治 SEALDsが残したもの:4 「市民連合」野党共闘に結実 5団体「期待裏切らないで」」、『朝日新聞』2016年08月21日(日)付。

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街頭政治 SEALDsが残したもの:4 「市民連合野党共闘に結実 5団体「期待裏切らないで」
2016年8月21日


シールズなど五つの市民団体が市民連合を結成し、参院選に向けた野党共闘を求めた=2015年12月20日、東京都千代田区佐藤恵子撮影
 
 野党共闘が実際に動き出したのは、安全保障関連法の成立から約1カ月後の2015年10月16日だった。

 民主党幹事長の枝野幸男が「安保関連法に反対の市民団体と意見交換をしたい」と呼びかけ、市民団体と野党の代表者が参院議員会館の一室に集まった。

 市民団体はSEALDs(シールズ)のほか、「安全保障関連法案に反対する学者の会」、「戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会」、政治学などの専門家でつくる「立憲デモクラシーの会」、子育て世代の母親らによる「安保関連法案に反対するママの会」の5団体だった。政党は民主、維新、共産、社民、生活の5党が参加した。

 シールズの諏訪原健(たけし)(23)が訴えた。「野党共闘に私たちをうまく使ってください」。ただ、この日はあいさつ程度で終わった。

 11月19日に2回目、12月9日に3回目の会合が開かれた。水面下で諏訪原らは、民主幹事長代理の福山哲郎や共産委員長の志位和夫接触。共闘の橋渡しを試みたが、参院選に向け候補者を擁立していた民主と共産は折り合わなかった。

 3回目の会合では、政党間で怒号が飛んだ。

 民主・枝野 「共産党と組んだら負ける」

 共産・山下芳生 「共闘のための正式な手続きに入るべきだ」

 民主・福山 「そんな簡単にできるわけないでしょう」

 市民団体から参加していた上智大教授の中野晃一が、議員たちのやり取りを見かねて割って入った。「民主党がなくなろうが共産党がなくなろうが、市民には知ったことではない。でも、今この場に集まっているのは、まだ野党がやってくれるという期待があるからだ。期待を裏切らないで欲しい」

 さらに、シールズメンバーの千葉泰真(やすまさ)(25)が「私たち5団体は『市民連合』を結成する」と伝えた。煮え切らない野党に先んじて、市民団体が連合体を組むとの宣言だった。

 構想は、千葉や諏訪原がLINEでやり取りし、中野と相談して11月から練っていた。各党が受け入れられるよう、「安保関連法の廃止」「立憲主義の回復」を柱にした。12月20日、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」を結成し、参院選で32ある1人区で野党統一候補の擁立を求めた。

 年が明けた16年1月27日、中野は法政大教授の山口二郎とともに、都内のホテルで民主党内で野党共闘に慎重な前首相の野田佳彦と面会した。

 「夏の参院選で負けたら、民主党はなくなりますよ」。山口がこうたたみかけると、野田は言葉を選びながら、党代表の岡田克也の名前を挙げて答えた。「岡田さんが決めたら、ついていくしかない」。同党保守派の重鎮が事実上、野党共闘を受け入れた。

 翌2月の19日。5野党は党首会談を開き、「安保関連法の廃止」など4項目で一致。シールズをはじめとする市民連合が求めた項目に各党が乗った。

 前年秋の安保関連法の成立直後から市民団体が求めていた野党共闘は、5カ月後にようやく結実した。シールズでは、千葉らとともに野党との交渉に参加していた本間信和(21)が野党5党の合意の知らせを聞いて叫んだ。「死ぬほどうれしい」=敬称略(藤原慎一
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(街頭政治 SEALDsが残したもの:4)「市民連合」野党共闘に結実 5団体「期待裏切らないで」:朝日新聞デジタル

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