覚え書:「ビジネス 誰が音楽をタダにした?―巨大産業をぶっ潰した男たち [著]スティーヴン・ウィット [文]梶山寿子(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年11月06日(日)付。

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ビジネス
誰が音楽をタダにした?―巨大産業をぶっ潰した男たち [著]スティーヴン・ウィット
[文]梶山寿子(ジャーナリスト)  [掲載]2016年11月06日
 
■徹底調査でスリリングな謎解き

 音楽ビジネスは劇的に変化している。ナップスターなどファイル共有ソフトの出現でCDが売れなくなり、有料の音楽配信が主流に。さらに定額制の聞き放題サービスも台頭中。お小遣いをCD代につぎ込んだ時代は遥(はる)か昔だ。
 巨大産業を衰退に追い込んだのは誰か。世界中に拡散した膨大な違法ファイルの流出源はどこか。徹底した調査でその謎解きに挑む、圧巻のノンフィクションである。
 物語は三人の男を軸に進む。MP3(音声データ圧縮技術)を開発したドイツ人技術者。ラップ音楽を人気ジャンルに育てたレコード会社のトップ。片田舎のCD工場で地道に働く寡黙な男。三人三様の人間ドラマに、海賊行為の秘密組織や、それを追うFBI捜査官らが絡み合う。
 ラップに熱狂する“海賊たち”が、期せずして音楽業界に大打撃を与える展開がスリリング。著作権ビジネスの光と影も生々しい。映画化が決まったのも頷(うなず)けよう。
 ナップスターでもアップルでもなく、平凡な工場労働者が音楽産業を揺るがした。その背景にあるのがネットの普及とシェア経済の到来ならば、この惨劇は別の業界でも起こりうる。スリラー小説より背筋が凍る実話である。
    −−「ビジネス 誰が音楽をタダにした?―巨大産業をぶっ潰した男たち [著]スティーヴン・ウィット [文]梶山寿子(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年11月06日(日)付。

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