覚え書:「文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊! [文]辻山良雄(書店「Title」店主)」、『朝日新聞』2016年11月27日(日)付。
-
-
-
- -
-
-
文庫この新刊!
辻山良雄が薦める文庫この新刊!
[文]辻山良雄(書店「Title」店主) [掲載]2016年11月27日
(1)『猟師になりたい!』 北尾トロ著 角川文庫 691円
(2)『古代金属国家論』 内藤正敏・松岡正剛著 立東舎文庫 864円
(3)『ちいさな城下町』 安西水丸著 文春文庫 680円
◇
高度に情報化した社会への反動か、最近店に入ってくる本には「山伏」「ジビエ」「狩り」など、野性に向かった本も目に付く。(1)は中年になって長野に移住した著者が、狩猟免許を取り、はじめて銃を手にして、山に入り獲物を探すまでの体験リポート。遠くに見える世界を、身近で「私にもできるかも」と思わせるような親しみやすい語り口。
(2)は2人の碩学(せきがく)が自由闊達(かったつ)に語り合った「もう一つの日本史」。日本の山岳信仰、とりわけ東北地方の山々に広がる独自の文化に着目し、歴史の出来事に独自の解釈を施していく。対談は1970年代後半に行われ、奔放な想像力が新しい知を切り拓(ひら)こうとしていた時代の熱量を感じる。
(3)は都会的なイメージが強い著者の、また違う一面が覗(のぞ)ける一冊。歴史に大きな名前を残さなかった人物に対してのやさしい共感が、どのページにも溢(あふ)れている。十万石以下の城下町に残る風情を尋ねて歩いた旅は、余韻が残る文章でさらりと書かれており、どこかに行きたくなります。
−−「文庫この新刊! 辻山良雄が薦める文庫この新刊! [文]辻山良雄(書店「Title」店主)」、『朝日新聞』2016年11月27日(日)付。
-
-
-
- -
-
-
http://book.asahi.com/reviews/column/2016112700003.html