覚え書:「ビジネス 規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす [著]黒川清 [文]森健(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年05月01日(日)付。

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ビジネス
規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす [著]黒川清
[文]森健(ジャーナリスト)  [掲載]2016年05月01日

■異論を排除する独善性に警告

 福島第一原発事故後、政府や東電など四つの事故調査委員会が立ち上げられた。このうち海外の評価が高かったのが国会事故調で、ネットで調査の様子も公開し、報告書では事故を「人災」と記した。本書はその国会事故調の元委員長による警告の書だ。
 本書は2部構成で、1部が調査の立ち上げから報告書提出までの経緯、2部が調査活動を経た著者の日本人論だ。医師・研究者である著者は科学者の目で原発事故を捉え、政府の発表や報道に違和感を抱く。全米科学アカデミーと意見交換し、立法府=国会の下に調査委員会をつくることを提言。時限立法で国会事故調法が可決されると事故・被害・政策の調査、政策提言という4分野で活動を開始した。
 1部での活動における情報漏洩(ろうえい)に対する厳しい対応なども興味深いが、2部の調査を終えての考察も鋭い。調査を通じて著者が痛感したのは原発だけの問題ではなかった。役所や企業など多くの日本人の組織に共通する問題――異論を排除する関係者の独善的な思い込み=グループシンク(集団浅慮)だった。あれだけの事故を起こした本質的な要因が、日本人の慣習に根ざしているという指摘は読者に重く響く。
    −−「ビジネス 規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす [著]黒川清 [文]森健(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年05月01日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2016050600007.html



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黒川 清
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