覚え書:「ビジネス 個人を幸福にしない日本の組織 [著]太田肇 [文]清野由美(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年03月06日(日)付。

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ビジネス
個人を幸福にしない日本の組織 [著]太田肇
[文]清野由美(ジャーナリスト)  [掲載]2016年03月06日
 
■抑圧的な「予定調和」の原理

 米倉涼子上戸彩武井咲は同じ美少女コンテストの出身だが、いずれもグランプリではない。一方、グランプリ受賞者は、その後、意外と活躍しない。企業人事も同じで、日本人が「創造的な人材」を選(え)りすぐると、逆に競争力の乏しい陣容になってしまう。なぜか。私たちの社会原理に、「組織信仰」と、それを支える「予定調和」が組み込まれているからだ。
 職場、教室、PTA、町内会と、日本の組織を貫くこのような原理は、「同調圧力」「過剰なコンプライアンス」とも結び付いて、個人を抑圧する。すべてブレークスルーとは対極の力学で、近年、イノベーション分野で影が薄い日本の、足を引っ張る要因にもなっている。
 そこで著者は説く。「組織はバラバラなくらいがよい」「大学入試に抽選を取り入れよ」「PTAや町内会は自由参加でよい」
 組織信者にはとんでもないことかもしれないが、「そもそも組織は個人が達成できないことを成し遂げるためにつくられる」のだから、その通りだ。日本に「健全な個人主義」を根付かせたいという著者は、組織信者からすると「異端」。だからこそ弊害も改善点も見える。ただ、日本の組織が個人中心にシフトするには、まだ信仰の壁はあまりに厚い。
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 新潮新書・799円
    −−「ビジネス 個人を幸福にしない日本の組織 [著]太田肇 [文]清野由美(ジャーナリスト)」、『朝日新聞』2016年03月06日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2016030800003.html



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