覚え書:「著者に会いたい ゼロからわかるキリスト教 佐藤優さん [文]赤田康和」、『朝日新聞』2016年12月18日(日)付。
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著者に会いたい
ゼロからわかるキリスト教 佐藤優さん
[文]赤田康和 [掲載]2016年12月18日
佐藤優さん=恵原弘太郎撮影
■「神」を論じる不可能に挑む
主題は「神とは何か」という大きな問いだ。過激派組織「イスラム国」などによるテロが相次ぎ、資本主義を中心とする近代システムが限界をみせる「危機の時代」。だからこそ言語化が難しい神の領域を言語化しようとする「不可能の可能性」に挑む意味があるというのだ。
「神学は面白い学問で、諸学のパラダイム転換を先取りするんです」
題材にしたのは「民衆のアヘンである」と宗教を批判したマルクスの論考「ヘーゲル法哲学批判序説」だ。神が人間をつくったのでなく、人間が神をつくったとする論を、弁証法神学から仏教の阿頼耶識(あらやしき)、妖怪ウォッチなどにも触れ、深めていく。
講座をまとめた本。話し言葉ということもあって毒をちりばめた佐藤節が炸裂(さくれつ)している。マルクスを「議論が循環してしまった」と批判。哲学者ハーバーマスは「頭のいい人」だが「性格が悪い」。弁証法神学の立役者カール・バルトも妻がいながら女性看護師に助手をさせ、寝室も隣にしたとして「人格的には破綻(はたん)していました」と言い切る。
自身はクリスチャン。信仰の道に入ったのは「外圧」だった。「母に無理やり教会に連れて行かれた。神社に行っても『さい銭入れるな』『みこしを担ぐな』と言われた」
だが主体的な判断より、強制的に内在化された神に「無意識の領域まで支配される」経験にこそ本質がある、とみる。「決断は人間の主観的判断だから変わりうる。信仰は感化であり伝染なんです」
月90本の締め切りを抱える多忙な生活。癒やしてくれるのは飼い猫たちという。「猫は東京地検特捜部に行ったり裏切ったりしないですから」
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新潮社・1296円
−−「著者に会いたい ゼロからわかるキリスト教 佐藤優さん [文]赤田康和」、『朝日新聞』2016年12月18日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2016121800011.html