覚え書:「悩んで読むか、読んで悩むか 相手を否定せず、「私」を主語に伝える 斎藤環さん [文]斎藤環」、『朝日新聞』2017年01月15日(日)付。

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悩んで読むか、読んで悩むか
相手を否定せず、「私」を主語に伝える 斎藤環さん
[文]斎藤環  [掲載]2017年01月15日

 61年生まれ。精神科医で批評家。筑波大学教授。『オープンダイアローグとは何か』(著・訳)など。

■相談 占いにはまる友人とどう付き合えば?
 50代の友人女性が占いにはまっていて、天中殺(不運な時期)を信じ切っているようです。「今年は天中殺だからうまくいかないよ」というような言い方をされると不吉だし、他人の不幸を喜んでいるような気さえします。だんだん怖くなり、会わないようになりました。ただ、絶交するつもりはありません。今後、彼女とどのように付き合っていけばよいでしょうか。
 (仙台市、主婦・54歳)

■今週は斎藤環さんが回答します
 お友達に限らず、誰でも弱っているときは、占師の言葉が心の隙間に入り込んでくることがあります。そんな時は「バーナム効果」という言葉を知っていると便利です。心理学用語で「誰にでも当てはまるような一般的な性格記述を、自分だけに当てはまるとみなしてしまう現象」のことです。血液型性格診断なんかは、この応用と言われています。占いに限らず、心理検査などにもこの原理は応用されているそうで、くわしくは村上宣寛著『心理テストはウソでした』(講談社+α文庫・電子書籍594円)に書かれています。
 さて、そんなちょっと痛いお友達とも交際を続けたいとおっしゃるあなたは、なかなか優しい方ですね。占いは受け入れたくないけれど、お友達を切り捨てるのは忍びない、と。参考になりそうなのは「アサーション」という考え方です。
 心理学者の平木典子さんは、この分野で多くの著書がありますが、ここでは手に取りやすい新書の『アサーション入門』をお薦めします。
 自分を殺して相手を立てるか、相手を切り捨ててでも自分の主張を貫くか。あなたの葛藤はこんなふうに整理できると思いますが、そのいずれでもない第三の方法がアサーションです。難しいことではありません。ごく簡単に整理すれば、相手を変えようなどとは考えず、自分の言いたいことははっきり伝える、という態度のことです。
 代表的なものに「私メッセージ」があります。「私」を主語にして、自分の気持ちをはっきり伝えることです。もしあなたが「天中殺なんてインチキなのよ」と断定したら、これは一般論ですから、お友達も反論してきてケンカになるでしょう。そうではなくて、「ごめんね。私は天中殺の話を聞くと、なんだか怖くてイヤな気持ちになるの」と言ってみましょう。これはあなたの「主観」ですから反論はできません。それでもしお友達が「イヤな気持ちになるあなたがおかしい」などと言い出す人だったら……さすがにもう無理じゃないですかね。
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 次回は学者芸人のサンキュータツオさんが答えます。
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 ■悩み募集
 住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。
    −−「悩んで読むか、読んで悩むか 相手を否定せず、「私」を主語に伝える 斎藤環さん [文]斎藤環」、『朝日新聞』2017年01月15日(日)付。

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http://book.asahi.com/reviews/column/2017011900005.html



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