覚え書:「悩んで読むか、読んで悩むか 努力は裏切らない、楽しんで続けて サンキュータツオさん [文]サンキュータツオ」、『朝日新聞』2017年01月22日(日)付。
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悩んで読むか、読んで悩むか
努力は裏切らない、楽しんで続けて サンキュータツオさん
[文]サンキュータツオ [掲載]2017年01月22日
76年生まれ。漫才コンビ「米粒写経」として活動。一橋大学非常勤講師。『国語辞典の遊び方』など。
■相談 大好きな音楽、人前で発表したい
私は音楽が大好きです。小さい頃からの憧れもあり、30歳を過ぎてから20年ほど、電子オルガンを習っていました。夢は、披露宴の2次会や送別会、激励会など、なんでもいいからみんなの前で発表すること。知人や親戚に「発表の場があれば声をかけてね」とお願いしているのですが、夢はなかなか遠いです。モチベーションを高めるいい本はありませんか?
(福岡市、若杉みか・48歳)
■今週はサンキュータツオさんが回答します
みんなの前で発表する機会を自分で作る、というほどでもないが、声をかけられる機会を待っている、ということですよね。それではなかなか声をかけられないと思います。たとえ趣味であっても自分で場を作るほどの覚悟のない人に、あなただったら声をかけますか?
客観的に見たら、モチベーションの低い人、と判断されてもおかしくないと思います。どんなに小さくても自分で場所を作ってみてはいかがでしょうか。路上でもいいです。喫茶店を借りてもいいです。
「モチベーションを高める」本を紹介します。
河原和音著『青空エール』(全19巻、集英社・各432円)は、ひっこみ思案の女子高生がトランペットを吹くために吹奏楽部に入部する話。まわりの人はみんな上手で、スタートが遅かった主人公のつばさは、自分に自信がなかったのだが、夢である「甲子園でトランペットを吹く」ことを諦めずに練習を続ける。この漫画はすべての「自信がないけど、なにかをやりたい人」へのエールです。
また、アメリカのグランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)をご存じですか? 地方で主婦をしていたモーゼスは、70歳で夫を亡くし、その後リウマチになってリハビリをかねて油絵を描き始めました。そのとき、75歳。自分の愛する田園風景を描き続け、それが次第に評判を呼び、80歳で個展を開いて、一躍有名画家になった方です。101歳で亡くなったときには1500点以上の作品を残した国民的画家になっていました。彼女が描いた風景を絵本にしたのが『モーゼスおばあさんの四季』です。
グランマ・モーゼスのようにいつだれの目に触れても恥ずかしくない「精一杯(せいいっぱい)」を続けていれば、そして、表現することを心から楽しんでいれば、自然と人が集まってくるはずです。
大丈夫、あなたの20年は決して裏切りません。あなたが楽しんでいれば、その姿を見たくて声をかける人だっているはずです。
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次回(2月5日)は作家の三浦しをんさんが答えます。
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■悩み募集
住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望の回答者を明記し、郵送は〒104・8011 朝日新聞読書面「悩んで読むか、読んで悩むか」係、Eメールはdokusho−soudan@asahi.comへ。採用者には図書カード2000円分を進呈します。 −−「悩んで読むか、読んで悩むか 努力は裏切らない、楽しんで続けて サンキュータツオさん [文]サンキュータツオ」、『朝日新聞』2017年01月22日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2017012200017.html