覚え書:「我々はどこから来て、どこへ向かうのか:2)日本人って何だろう」、『朝日新聞』2017年01月03日(火)付。

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我々はどこから来て、どこへ向かうのか:2)日本人って何だろう
2017年1月3日

住民の半分が外国籍の保見団地(後方)でソアレス・マルコさんは暮らす=愛知県豊田市、林敏行撮影

 ■vol.2 日本人

 様々なルーツを持つ日本人の活躍が、珍しくなくなった。「同質」を自分たちの特徴と考えてきた日本人。その自画像は、変わっていくのだろうか。(浅倉拓也)

 純粋な日本人。

 昨年は、そんな言葉について考えさせられた。

 8月、台湾にルーツがある蓮舫氏の国籍が、民進党代表選を前に問題視された一方、リオデジャネイロ五輪では、陸上のケンブリッジ飛鳥選手ら、外国にルーツがある日本代表に多くの人が喝采を送っていた。

 愛知県豊田市の保見ケ丘(ほみがおか)。住民約7千人の半分が外国籍というこの町で、高校3年のソアレス・マルコさん(18)も、テレビにかじりついた一人だ。日系4世のブラジル国籍。高校で本格的に陸上を始め、県の大会で入賞したこともある。将来は日本籍をとって、五輪をめざすという。

 浅黒い肌に、ひときわ澄んだ目。だが、まっすぐ座り、時々はにかむように話す姿は、日本のどこにでもいる男子高校生だ。

 やっぱり、外国ルーツの日本人選手が出ると、応援にも力が入る?

 「いや、それはないっす」。即答だった。「僕は自分のこと、ただの日本人と思ってるんで」

 生まれ育った保見団地の幼なじみは、多くがブラジル人だ。ただ、日本語で苦労する両親を通訳で助けたくて、日本人の子どもともつき合うよう努めた。

 日本国籍を取ろうと思うのは、五輪と関係ないという。「ずっと日本に住みたいんで。日本で生まれ育ったし、日本人の血もちょっと入ってるし。日本人でいいんじゃないですか」

     *

 日本人らしい容姿、という固定観念をくつがえそうとする人もいる。

 一昨年、ミス・ユニバース日本代表に選ばれた宮本エリアナさん(22)は、父親がアフリカ系米国人だ。長崎県佐世保市で日本人の母や祖母に育てられた。子どもの時は、肌の色の濃さから、いじめにもあった。

 日本での生きづらさを感じ、高校時代は米国で、父方の家族と暮らした。それでも、日本に帰るとほっとする自分がいた。

 「日本人じゃない」。日本代表に選ばれると、インターネットには、称賛と並んで、異議や差別的なコメントがあふれた。だが、そんな攻撃は「想定内でした」。むしろ、議論になるのを期待していた。

 コンテストに応募したのには、理由があった。同じく外国人の親を持つ友人が、自殺したのだ。「ハーフなのに英語が話せない」とからかわれるなど、祖国・日本の居心地の悪さをこぼしていた。

 「見た目が違う日本人がいるのを知ってほしい」。日本代表に選ばれた後、1年間で取材依頼は約400件にも上った。とりわけ海外メディアが反応した。

 別のコンテスト、ミス・ワールドでも昨年、インド系の吉川プリアンカさんが日本代表に選ばれた。

 日本人とは何なのか。

 (2面に続く)
    −−「我々はどこから来て、どこへ向かうのか:2)日本人って何だろう」、『朝日新聞』2017年01月03日(火)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S12730504.html





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