日記:原則を歪め、「家族の絆」を税制で誘導する安倍政権の舵取りの危うさ

Resize6349

        • -

 いま、国民に対し、国がどのように課税するかという「税制」の世界に異常事態が起きている。税が守るべき「公平・中立・簡素」の原則も、これまでの議論の蓄積も意に介さず、まるで“理想”の家族像に誘導するような改正が実現したり、実現間近であるかのように扱ったりと、着々と布石が打たれている。安倍政権は憲法改正よりも一足早く、税制改正で成果を上げているようだ。長年続いてきた地道な税制改正論議のプロセスが、なぜ突然、変質したのか? 安倍首相を支持する日本会議の中心メンバーが、もう一〇年以上前から“伝統”的な家族の崩壊に危機感を持ち、税制を通じて「家族の絆」を強化することを一つの目標に掲げてきたと知れば、その謎も解けるだろう。
 「税金」と言われてピンと来るのは、私たちの暮らしに身近な消費税ぐらいかもしれない。しかし税のあり方は、知らずしらず人の生き方に影響を及ぼす。配偶者控除によって、一〇三万円を超えないように働き方を抑えるというのが典型例だ。税金とは、国歌が強制力をおって国民から徴収するものだ。だからこそ、原則が守られなければ、信頼は損なわれてしまう。そうなれば税制は成り立たない。結婚したりしなかったり、離婚したり、LGBTや事実婚カップルとして生きるなど、一人ひとりの多様な生き方を同じように認めてこそ、社会は活性化し、豊かになる。それが税制の基盤である。憲法改正だけが問題なのではない。原則を歪め、「家族の絆」を税制で誘導する安倍政権の舵取りの危うさを、少しでも多くの人と共有したい。
    −−堀内京子「税制で誘導される『家族の絆』」、塚田穂高編『徹底検証 日本の右傾化』筑摩書房、2017年、231−232頁。

        • -


Resize5686