覚え書:「文庫この新刊! 東直子が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2018年03月18日(日)付。
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文庫この新刊! 東直子が薦める文庫この新刊!
文庫この新刊!
東直子が薦める文庫この新刊!
2018年03月18日
(1)『戦場から生きのびて ぼくは少年兵士だった』 イシメール・ベア著 忠平美幸訳 河出文庫 1058円
(2)『昭和史の10大事件』 宮部みゆき、半藤一利著 文春文庫 724円
(3)『たまもの』 神藏美子著 ちくま文庫 1296円
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現在を忙しく生きつつも、過去を客観的に振り返って考えることも必須である。平成という時代が終わろうとしている今、特にそう思う。
(1)は、シエラレオネの内戦に巻き込まれ、少年兵士として戦場で闘った経験が綴(つづ)られている。村が突然戦場と化し、家族や友人たちを含めた無残な殺戮(さつりく)を目の当たりにする。生き延びるため、暴力を受ける側から行う側に転換していく、その狂気の過程が生々しい。今こそ知るべき、考えるべき要素に満ちている。
(2)では、ミステリー作家と歴史探偵が、東京裁判や第五福竜丸事件等、注目すべき昭和の事件を語り合っている。語り手それぞれの身に引きつけて具体性を帯びることで、歴史が血肉を帯び、新たな問いが見えてくる。
(3)は、一人の女性が二人の男性を同時期に愛し、又(また)愛された日々を綴った私的フォトドキュメンタリー。感傷と情熱と退廃と純粋さが渦巻く独自の感性に驚嘆しつつ引き込まれる。坪内祐三と末井昭の魅力を希有(けう)な視点から知ることもできる。
(歌人、作家)
−−「文庫この新刊! 東直子が薦める文庫この新刊!」、『朝日新聞』2018年03月18日(日)付。
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http://book.asahi.com/reviews/column/2018031800003.html