覚え書:「社説 国会軽視再び 「国難」をなぜ論じない」、『朝日新聞』2017年10月27日(金)付。

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社説 国会軽視再び 「国難」をなぜ論じない
2017年10月27日

 勝てば官軍ということか。

 政府・自民党は、首相指名選挙を行う特別国会を11月1日〜8日に開いた後、臨時国会は開かない方向で調整を始めた。

 憲法53条に基づき、野党が臨時国会を要求してから4カ月。安倍政権は今回もまた、本格審議を逃れようとしている。

 衆院選の大勝後、首相や閣僚が口々に誓った「謙虚」はどうなったのか。巨大与党のおごりが早速、頭をもたげている。

 国会を軽んじる安倍政権の姿勢は、歴代政権でも際立つ。

 通常国会の1月召集が定着した1992年以降、秋の臨時国会がなかったのは、小泉政権の2005年と安倍政権の15年だけだ。ただ05年は特別国会が9月〜11月に開かれ、所信表明演説予算委員会も行われた。

 安倍政権は15年秋も、野党の臨時国会召集要求に応じなかった。閣僚らのスキャンダルが相次いだことが背景にあった。

 今回は野党の要求があれば、予算委員会の閉会中審査には応じる考えという。だが、わずか1日か2日の審査では議論を深めようにも限界がある。

 審議すべきは森友・加計問題だけではない。首相みずから「国難」と強調した北朝鮮情勢や消費増税の使途変更についても、国会で論じあうことが欠かせない。

 だが臨時国会がなくなれば、6月に通常国会を閉じて年明けまで約半年も、本格論戦が行われないことになる。言論の府の存在が問われる異常事態だ。

 ここは野党の出番である。だが、その野党が心もとない。

 民進党は四分五裂し、立憲民主党55年体制以降、獲得議席が最少の野党第1党だ。

 それでも、安倍政権の憲法無視をこのまま見過ごすことは、あってはならない。

 同党の枝野幸男代表は「永田町の数合わせに我々もコミットしていると誤解されれば、今回頂いた期待はあっという間にどこかにいってしまう」と述べ、野党再編論に距離を置く。

 それはその通りだろう。ただ民主主義や立憲主義が問われるこの局面では、臨時国会を求める一点で野党は連携すべきだ。

 自民党は野党時代の2012年、要求後20日以内の臨時国会召集を義務づける改憲草案をまとめた。それにならって、今度は「20日以内」の期限を付けて改めて要求してはどうか。

 「憲法というルールに基づいて権力を使う。まっとうな政治を取り戻す」。枝野氏は衆院選でそう訴えた。その約束を果たすためにも、野党協力への指導力を期待する。
    −−「社説 国会軽視再び 「国難」をなぜ論じない」、『朝日新聞』2017年10月27日(金)付。

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