日記:歪曲されたキリスト教


        • -

 南部の黒人教会は、そのルーツを奴隷制下の「見えざる教会」と呼ばれる秘密の礼拝集会にさかのぼる。白人の奴隷主は、従順な奴隷を作るために黒人奴隷に宗教教育を施し、聖書は奴隷制を肯定しており、魂の救済を得るためには奴隷は主人に従う義務があると教え込んだ。しかし、黒人奴隷たちは、奴隷主に隠れて、自分たちだけの秘密の礼拝集会を行った。それは、森の奥や奴隷小屋で週にニ、三回開かれた。読み書きを禁止されていた黒人奴隷は、断片的な聖書の情報に想像力を加え、奴隷主の「歪曲されたキリスト教」を再解釈した。キリスト教は全ての人間の平等を説いており、正義と愛の神は、被抑圧者である自分たちの黒人の解放に関心を持っている、という信仰を発展させていく。
    −−黒崎真『マーティン・ルーサー・キング 非暴力の闘士』岩波新書、2018年、4−5頁。

        • -