【覚え書】【研究ノート】ジジェク『ルソー、ジャン=ジャックを裁く−−対話』 情念 幸福 自己愛 利己愛

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 素朴な情念はすべて直接にわれわれの幸福をめざしているので、それに関係のある目標しかわれわれをかかわらせず、自己愛のみを原理としているので、本質的にまったく優しく穏やかなものなのです。しかし障害によって目標からそらされると素朴な情念は到達すべき目標よりも避けるべき障害のほうにかかずらって性質を変えてしまい、怒りっぽく憎しみに満ちた情念になる。まさにこのようにして、善なる絶対感情である自己愛が、利己愛、すなわちたがいを比較させ選り好みさせる相対感情になるわけです。利己愛のもたらす喜びはただただ否定的なもので、利己愛はもはやわれわれ自身の幸福によってではなく、他人の不幸によってのみ満足させられるのです
    −−ジジェク小西嘉幸訳)『ルソー、ジャン=ジャックを裁く−−対話』白水社、1979年。

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