「東京都青少年条例案を委員会可決」に関する報道から


刑罰法規に触れる現行表現にははっきりいって抵抗はあるけれども、それは受容者の問題にすぎないし、それをどのように処理していくかは、その受容者の属する共同体の討議によって決していくことが基本だろうと思います。

改正前の罰則規定でも充分対応可能なはずなのですが、表現そのものに関して権力が容喙すること大いなる筋違い。

ここには違和感があります。

昨日の新聞からふたつの記事を覚え書。

良心の自殺行為はもう御免です。

一人一人の人間が、「それはどうよ」って討議しながら社会全体で問題を考えていくべき議題なのですが、どうもこの国土世間の人間というやつは、「お上にすべて委任する」というスタイルに慣れすぎて、自分で考えることができないようですね。

げふっw

治安警察法から治安維持法へという筋道かw



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「都青少年条例案を委員会可決」

 東京都議会総務委員会は13日、過激な性的描写がある漫画の販売規制を強化する青少年健全育成条例の改正案を民主、自民、公明の3会派の賛成多数で可決した。漫画家や出版業界に強い反対の声があることから、付帯決議で都に慎重な運用を求めた。15日の本会議で成立し、来年7月1日以降発行の漫画本から適用される。
 改正案は強姦など刑罰法規に触れる性的な行為や、親子など近親者間の性行為を「不当に賛美、誇張」して描いた漫画やアニメを、18歳未満に販売することを規制する。【真野森作】
    −−「都青少年条例案を委員会可決」、『毎日新聞』2010年12月14日(火)付。

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「事実上の表現規制……怖くて書けなくなる」
豊かな文化 生まれない
漫画家 野上武志さん

13日の東京都議会総務委員会で可決された青少年健全育成条例改正案。都は「表現規制が目的ではない。どんな漫画も描くのは自由」と強調するが、漫画家たちは「事実上の表現規制になる」と反論する。「過激な漫画」の現場から売れっ子を目指す漫画家の一人に話を聞いた。【真野森作、写真も】

「私たち漫画家のほとんどが個人事業者。そのうえ世間が相手の商売なので、風当たりには敏感。面倒な規制ができると、引っかかるのが怖くて規制のずっと手前で描けなくなってしまう。すでに萎縮し始めている仲間もいる」。20代後半でデビューした野上武志さん(37)は硬い表情で口を開いた。東京都練馬区内のマンションに自宅兼仕事場を置き、お色気とミリタリー物を掛け合わせたジャンルの作品を月刊誌で連載している。
 現行の都条例は、性交を露骨に描いた「著しく性的感情を刺激」する漫画を18歳未満に売ることを禁じる。だが改正案は、描写がそこまでなくても、強姦など「刑罰法規に触れる性的行為」を「不当に賛美したり、誇張して」描いた作品を規制対象とする。民法が婚姻を禁じる近親間の性交も描き方によってはご法度だ。
 漫画家からすれば、新たな規制の網がどこまで及ぶのかわかりにくく、不安がぬぐえないという。誰でも買える一般漫画として出版したのに、後から「不健全図書」(成人漫画相当)に指定されると、出版社は成人マークをつけてビニール包装した上で、成人コーナーでしか販売できなくなる。コスト増や販路が限定されることで、絶版に至ることもありうる。一方、最初から成人漫画として販売すると、読者層はかなり限定される。
 野上さんは「とりわけ収入が少なく立場が不安定な新人は、(不健全図書指定など)一度のトラブルが命取り。挑戦の場が狭まってしまう」と危惧している。
 野上さんは大学卒業後に会社勤めをしていたが、転身を決意。働きながら作品を描きためるうち、出版社から声がかかった。プロ第1作は「エロ」が売り物の成人漫画。このジャンルについて「常に新しいものを求められるカオスのようで、だからこそ新人がデビューしやすい。ごった煮の中から新しい表現手法が生まれてくる」と説明する。野上さんの連載の一つは、各国の戦車をセクシーな女性キャラクターとの抱き合わせで紹介し、ミリタリーの世界をとっつきやすくしているのが特徴だ。
 漫画の表現を巡る「タブー」は性だけに限らない。近現代史が好きな野上さんは、日中戦争を正面から描く構想を温めているが、政治的な攻撃を恐れて出版社はどこも難色を示すという。「タブーにぎりぎりまで挑み、人の欲求を描くのが漫画。大人の一員として、子どもに見せたくない作品への対策を社会全体で考えることには協力したい。けれど、『お任せ』のシステムの下では豊かな文化は生まれない」。野上さんは強調した。
    −−「事実上の表現規制……怖くて書けなくなる」、『毎日新聞』2010年12月14日(火)付。

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