幸福に達し幸福を考へるのに、地位や頭脳を必要としない。


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自然の道に従つて妄想を去るがよい。
幸福に達し幸福を考へるのに、地位や頭脳を必要としない。
その恵みは明白で、極端なところにはない。
正しく考え、善意を持つのみで足りるのだ。
天与の多寡を嘆くのは勝手だが、
尋常の判断力と生活は何人も平等に享けてゐる。
思ひだすがよい、「宇宙の原理の働きは、
部分的な法則によらず、一般的な法則による」ことを。
我らが正しく幸福と呼ぶものは、
一人の利益ではなく、全体の利益の中にあるのだ。
個人の見いだす幸福で、多かれ少なかれ。
人類全体の方向を持たないものはない。
    −−ポウプ(上田勤訳)『人間論』岩波文庫、1950年、85頁。

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震災の影響で授業回数が圧縮されたり日程がずれこんだり、本年の前期授業はかなり予定と違う構成になりましたが、なんとか無事最終講義を終えることができました。

暑い中、最後まで熱心に授業を聞いてくださった受講生の皆様ありがとうございます。

哲学とは、他の学問と違って、便宜的には「役に立ち」ません。
ただし、そうさせることは当人によって可能とはなります。

何のお役にもたてない学問を選択してくださって嬉しいのですが、最後は突き放す形で恐縮ですが、哲学を学んだことによって、歴史や制度、文化や団体に籠絡されない自律・自立した内発性豊かな人間、他者と連帯できる知者へと成長してほしいと希います。

くどいようですが、皆様、ありがとうございました。






⇒ ココログ版 幸福に達し幸福を考へるのに、地位や頭脳を必要としない。: Essais d'herméneutique



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