覚え書:「異論反論 反原発デモの参加者が増えています 寄稿 雨宮処凛」(『毎日新聞』)+「デモと広場の自由」のための共同声明。





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異論反論 反原発デモの参加者が増えています 寄稿 雨宮処凛

未来は私たちで決めよう

 野田佳彦首相の言うことがどんどん変わっていく。
 就任直後は安全性を確認した原発の再稼働に触れつつ、長期的には「脱原発依存」。しかし、9月21日の米紙インタビューでは「来年夏に向けての再稼働」に言及。さらに22日の国連会合では「脱原発依存」には触れもしなかった。
 一方、19日に東京・明治公園で開催された「さようなら原発5万人集会」には6万人が押し寄せた。事故から半年の9月11〜19日の間は「脱原発アクションウィーク」と名付けられ、全国で120以上のデモや集会が開催された。
 しかし、そんなデモでは逮捕者も出ている。11日、1万人が参加した「新宿・原発やめろデモ」では12人が逮捕。私も現場にいたが、警備の警察がデモ隊に乱入するなど混乱を引き起こし、その中で次々と参加者が逮捕されていくという状況だった。一部報道では「デモ隊が暴力を振るった」などとされているが、私の知る限りそんな事実はない。この日集まったのは、自らが意思表示をしないと未来を変えられないという思いをもった人々だ。しかし、街頭で声を上げることそのものがまるで「罪」であるかのように逮捕される。一方で、福島の子どもたちを今も被爆の危険にさらし、原発周辺に住む人たちの生活を根こそぎ破壊した東京電力原発を推進してきた政治家などからは逮捕者など出ていないし、なんの罪にも問われていない。
 この逮捕を受け、評論家の柄谷行人氏などが、「『デモと広場の自由』のための共同声明」を出し、記者会見を開催した。そこで柄谷氏は、日本でデモが少なくなってきたことと、これほど地震が多い国に54基も原発がつくられたことには関係がある、と発言。また、現在デモが起きていることは「社会の混乱」ではなく「成熟度」を示すと述べた。

「自分で考え、行動すること」が大切
 長らく、この国の多くの人はデモという、誰もがもっている権利の存在を忘れていた。しかし、デモは誰にだってできる。72時間前までに出発地の最寄りの警察署に申請すればいいだけだ。憲法で保証されている権利なのだ。
 いつからこの国では、「自分で考え、行動すること」が特殊なことになったのだろう。そしてそんな人任せの作法が、地震大国に世界中の原発の1割以上を集中させるという異常事態を作り出した。しかし、他の国を見ると、当たり前に意思表示を、現実を変えている。イタリアでは6月に国民投票があり、94%以上が脱原発を選択。スイスでも脱原発の法案成立が確実となり、ドイツでも7月に脱原発法が成立した。その背景にあるのは世論だろう。福島の事故を受け、さまざまな国でデモが起こり、こうして現実を変えている。
 私達は、どんな未来を望むのか。当事国の当事者が動かなければ、何も変わらない。

あまみや・かりん 作家。1975年生まれ。反貧困ネットワーク副代表なども努める。「大震災の発生以来、計12回のデモに参加したら、5キロもやせました。デモはダイエット効果も狙えます。本文中の共同声明には、私も名前を連ねてます」

    −−「異論反論 反原発デモの参加者が増えています 寄稿 雨宮処凛」、『毎日新聞』2011年10月5日(水)付。

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言及されている「デモと広場の自由」のための共同声明は以下の通り。


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「デモと広場の自由」のための共同声明
3・11原発事故において、東京電力経産省、政府は、被害の実情を隠し過小に扱い、近い将来において多数の死者をもたらす恐れのある事態を招きました。これが犯罪的な行為であることは明らかです。さらに、これは日本の憲法に反するものです。《すべて国民(people)は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する》(25条)。しかし、東京電力経産省、政府はこの事態に対して責任をとるべきなのに、すでに片づいたかのようにふるまっています。
それに抗議し原発の全面的廃炉を要求する声が、国民の中からわき起こっています。そして、その意思がデモとして表現されるのは当然です。デモは「集会と表現の自由」を掲げた憲法21条において保証された民主主義の基本的権利です。そして、全国各地にデモが澎湃(ほうはい)と起こってきたことは、日本の社会の混乱ではなく、成熟度を示すものです。海外のメディアもその点に注目しています。
しかし、実際には、デモは警察によってたえず妨害されています。9月11日に東京・新宿で行われた「9 ・11原発やめろデモ!!!!!」では、12人の参加者が逮捕されました。You Tubeの動画を見れば明らかなように、これは何の根拠もない強引な逮捕です。これまで若者の間に反原発デモを盛り上げてきたグループを狙い打ちすることで、反原発デモ全般を抑え込もうとする意図が透けて見えます。
私たちはこのような不法に抗議し、民衆の意思表示の手段であるデモの権利を擁護します。日本のマスメディアが反原発デモや不当逮捕をきちんと報道しないのは、反原発の意思が存在する事実を消去するのに手を貸すことになります。私たちはマスメディアの報道姿勢に反省を求めます。
2011年9月29日
起草者:柄谷行人鵜飼哲小熊英二

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共同声明 | 「デモと広場の自由」のための共同声明









⇒ ココログ版 覚え書:「異論反論 反原発デモの参加者が増えています 寄稿 雨宮処凛」(『毎日新聞』)+「デモと広場の自由」のための共同声明: Essais d'herméneutique



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