覚え書:「東日本大震災:被災地での学生ボランティア活動 大学で対応割れる単位認定」、『毎日新聞』2011年10月10日(月)付。


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東日本大震災:被災地での学生ボランティア活動 大学で対応割れる単位認定

 ◇「教育の一環」「本来は無償の行為」と賛否両論
 東日本大震災の発生から7カ月。被災地での学生ボランティア活動に大学が単位を与える動きが出始めている。今も学生はさまざまな支援活動に汗を流しているが、本来は見返りを求めない無償の行為。その在り方を巡り、各大学の対応は分かれている。【遠藤拓】

 震災で液状化の被害が目立った千葉県浦安市郊外。スーパーマーケットの入り口脇で、紫色のはっぴを着た学生たちが威勢良く買い物客を呼び込んでいる。「被災地支援の物産展です」。テーブルには福島県岩手県から取り寄せたお菓子がずらりと並ぶ。
 明治大学の学生が被災地の商品を販売する「被災地サポートマルシェ」。6月から週末ごとに開いている。大学の授業「東日本大震災に伴うボランティア実習」の一環でもある。
 学生はボランティアの心構えや注意を学び、浦安での商品販売や被災地で授業が遅れた小中学生の学習支援、岩手県大船渡市でのがれきの片付けにあたる。事後にはリポートを提出。60時間の実習で2単位を得られる。
 同大「震災復興支援センター」副センター長、水野勝之教授は「事前、事後の学習も含めてボランティアを教育の一環ととらえている。自分の責任で行動し、長期間にわたり被災地を支えられる学生を育てたい」と授業の意義を話す。
 学生からは「ボランティアをしたくてもどうしていいか分からなかった。大学が窓口で取り組みやすい」と好評だが、単位認定には「本来は無償のはず。違和感がある」という学生も。水野教授は「大切なのは実習が終わってから。学生が自主的な行動を続けると期待している」と強調する。


 文部科学省は4月、各大学が授業の目的と密接にかかわると判断すれば、ボランティア活動に単位を付与できるとの通知を出した。95年の阪神大震災と同様の対応で、大学にとっては「お墨付き」と言える。
 桃山学院大大阪府和泉市)は明治大と同様、授業を新設した。「本学の教育理念である『キリスト教精神に基づく人格の陶冶(とうや)』に合致する。文科省の通知も後押しとなった」(松田義弘・学部事務課長)。単位数は、ボランティアをした時間を反映させ、事前講義を含む30時間につき1単位、最大4単位を認める。
 山口県立大は、これまであった国際交流や共生社会に関する実習(60時間、2単位)で、被災地のボランティア活動も認めることに。交通費や宿泊費の一部は大学側が負担し、他の授業と重なる場合は公休扱いとなる。「さまざまな立場の人と実際に交流して学ぶ授業の趣旨と被災地でのボランティアは合致していると判断した」と、岩野雅子教授は説明する。
 一方、単位認定には異論や慎重論もある。
 ボランティアを受け入れる宮城県の「石巻市災害ボランティアセンター」の副総括、佐藤正幸さんは「単位と関係なく学生は一生懸命だ。ただ個人的には、ボランティアは対価があってすることでなく、後で対価がついてくるものと思う」と疑問を投げかける。
 学習院大では「東日本大震災関連のボランティア活動を、授業の実習や演習と位置付けての単位認定をしない」と学生に告知。福井憲彦学長は「元からあるボランティア関連の授業に盛り込むならば分かるが、新たな授業で単位を認めるのは筋が違う」と説明する。福岡大は、開講の手続きが間に合わなかったことを理由に、授業にはしなかったが、8月下旬、学生ら約100人が被災地でがれきの撤去などに参加した。
 被災県にある岩手大は、「折衷案」を取った。ボランティアの実習を含む既存の授業(45時間、1単位)に被災地での活動も認めるが、卒業に必要な単位数としては扱わない。「ボランティアに従事した証しと位置づけている」(学生支援課)という。
 活動の教育的効果を重視する意見もある。関西学院大災害復興制度研究所長の室崎益輝教授は「ボランティアは学生を大きく成長させるので、大学がそれをカリキュラムに位置づけるのは大切なこと」と意義を認めつつ、「単位にふさわしい能力を得たかは、事後に見極める必要がある」といい、安易な単位認定には警鐘を鳴らす。
    −−「東日本大震災:被災地での学生ボランティア活動 大学で対応割れる単位認定」、『毎日新聞』2011年10月10日(月)付。

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⇒ ココログ版 東日本大震災:被災地での学生ボランティア活動 大学で対応割れる単位認定」、『毎日新聞』2011年10月10日(月)付。: Essais d'herméneutique


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