覚え書:「キャンパス交友:入学前から 「ミクシィで知り合った」/大学が公式SNS開設」、『毎日新聞』2012年4月4日(水)付。

        • -

キャンパス交友:入学前から 「ミクシィで知り合った」/大学が公式SNS開設

 全国各地から学生が集まり、出会いに胸がときめく大学の入学式。最近は、ミクシィなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じ、入学前から友達を作る学生が増えている。大学側が公式SNSを開設し、入学予定者の交歓の場とする例もあり、キャンパスの交友が一足早まっている。【榊真理子】

 ◇「ミクシィで知り合った」
 昨年4月、東京電機大の入学式。建築学科の中山はる香さん(19)は式典の30分前に着き、1人で席に座っていたところ、5人ほどの女性グループが楽しそうに入って来た。「同じ高校の友人同士かな」と思っていたが、後で「入学前にミクシィで知り合った」と聞いて驚いた。
 中山さんは同2月下旬に合格が決まったが、友達作りに焦る気持ちはなく、入学前のオリエンテーションにも参加しなかった。入学式では誰とも話すことなく帰宅した。入学後、1人でいた同級生の女子に声を掛け、今は授業も委員会活動も一緒だ。「ミクシィで最初の不安は取り除けるかもしれないが、結局は気の合う人と過ごすようになるので同じ気がする」と話す。
 東洋大哲学科の小川美奈さん(20)は高校3年の秋、推薦入試で合格が内定。すぐにミクシィ東洋大関連の情報を探し、2010年度入学予定者が開いたコミュニティーを見つけた。「入学式まで時間があるし友人も作れるなら」と思い、参加した。
 「哲学の勉強が不安で、友達ができればと思って入りました。同じ人、メッセ(メッセージの略)ください」などと書き込んだ。当初は他学科の人の反応ばかりだったが、3月に哲学科の女子学生からメッセージが届き、「うれしくてお母さんにも言っちゃった」。メールアドレスを交換し、プリクラ画像を送り合った。
 入学式前のガイダンスで待ち合わせ、以来仲良くしているという。「2人でいる人に声をかけるのは勇気がいる。とりあえず友達が1人できると安心だし、他の子にも声をかけやすくなった」と振り返る。

 ◇大学が公式SNS開設
 関東学院大工学部(横浜市金沢区)は08年から毎年1月、入学予定の学部生向けにSNSを開設している。学科別など複数のコミュニティーがあり、毎年アクセス数のトップは「友達をつくる」。仮名で登録できるが、実名での参加が多い。趣味や身長などの自己紹介、「髪を切りました」などの近況報告、「入学式はどんなスーツ?」といった質問も。書き込みには、絵文字や顔文字がちりばめられている。
 ミクシィのコミュニティーが誰でも入れるのと異なり、同学部のSNSは入学予定者に限定。1月のガイダンスで、ID、パスワードを通知した。当初は3月末までの開設だったが、延長してほしいとの要望を受け、昨春からは入学後の4月末まで開いている。
 11年度の利用者アンケートでは、「友達をつくる」機能について「役に立つと思う」が42%、「思わない」が10%、「分からない」が48%だった。「いきなり人に会うより気分的には楽」「入学するのが楽しみになった」などの声があった。3月末まで教務主任だった辻森淳教授は「不安解消の助けになるのは確かだが、あくまでも入学を控えた高校生のためのもの。本来は対面のコミュニケーションが大切。SNSは時間と空間を超えて触れ合うためのもので、補助的な役割と理解してほしい」と話す。

 ◇学校生活「勉強より友情」
 コミックやテレビアニメ、ゲームソフトにもなった小説「僕は友達が少ない」(メディアファクトリー)。「友達がいないのが嫌なのではなく、寂しいやつだと思われたくない」などと登場人物が語り、若者の共感を集めてきた。著者の平坂読(よみ)さんは「自分の学校時代を振り返ると、恋愛よりもクラスでの人間関係や友達との付き合いの方がより切実な問題だった」と語る。
 実際、学生の「友人志向」が高まっているようだ。18〜24歳を対象にした内閣府の「世界青年意識調査」(07年)では、「学校に通う意義」(複数回答)の設問に「友達との友情をはぐくむ」がトップ。66%がこう回答し、98年の60%から伸びた。韓国では「学歴や資格を得る」、米、英、仏は「一般的・基礎的知識を身につける」の回答が多く、対照的だ。03年の調査では「友人(恋人を含む)との関係に満足していますか」に、「満足」と答えた人が72%に上った。
 東京学芸大の浅野智彦准教授(社会学)は「近年は友達の重要性が高まり、特に大学は高校のようなクラスがなく、友達ができない不安が大きくなりやすい。孤立しないよう、SNSで予防措置を講じておきたいのではないか」とみる。一方で、「一緒に飲食したり、遊びに出かけた写真をネット上にアップしている。バーチャルなつながりを現実と融合させており、SNSが友人関係を濃密化する装置になっている」と指摘した。

 ◇高校のコミュニティーも
 ミクシィで検索すると、北海道大、早大、慶大、立命館大、九州大など全国の大学の今春入学予定者を対象にしたコミュニティーが、個人で開設されている。高校のコミュニティーもあり、参加者は少ないながらも、自己紹介や入りたい部活などを互いに書き込んでいる。
 また、専修大ネットワーク情報学部(川崎市)では一部の教員が、指定校推薦などで入学が決まった合格者に対しSNSを設け、質問に応じているという。
 入学前教育に詳しい関西国際大の浜名篤学長は「SNSのインフラ環境がない学生がいると、入学前から差ができかねないが、対人関係が苦手な新入生も多く、対応したプログラムが必要なことも確か」と話す。
    −−「キャンパス交友:入学前から 「ミクシィで知り合った」/大学が公式SNS開設」、『毎日新聞』2012年4月4日(水)付。

        • -






http://mainichi.jp/life/edu/news/20120404ddm013100024000c.html





202


203