覚え書:「みんなの広場 教育の行政従属化を憂える 無職 76(奈良市)」、『毎日新聞』2012年4月5日(木)付。



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みんなの広場
教育の行政従属化を憂える
無職 76(奈良市

 本紙の報道によると、3月に実施された大阪府立高校の卒業式で、君が代斉唱の際、弁護士でもある校長が教頭らに指示して、起立だけでなく、実際に歌っているかどうかを口の動きでチェックしていたという。
 本来、国民の人権を守る立場の弁護士でありながら、管理職を使って同僚の教職員を調べ上げる様は、もはや崇高な目的を持つ教育現場ではない。さながら、血なまぐさい幕末の世情に似たものを感じる。
 私は約40年間、ある教育委員会の行政職員をしてきた。教育長を何人も観てきたが、教育現場出身者は概して教育に対する見識が高かった。ところが、最近は校長ポストの「民間開放」がすぐれた制度のようにもてはやされている。人を育てる教育行政は一般行政とは性格が違うと思う。
 大阪や東京の行政首長による「君が代」に名を借りた教育の行政への従属化が執拗に試みられている。このような人の心への土足介入が受け入れられるとしたら、喜劇ではなく悲劇だ。
    −−「みんなの広場 教育の行政従属化を憂える 無職 76(奈良市)」、『毎日新聞』2012年4月5日(木)付。

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