覚え書:「ViewPoint 宗教がリトマス紙の時代は終わった=ケント・ギルバート」、『毎日新聞』2012年10月22日(月)付。


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ViewPoint
宗教がリトマス紙の時代は終わった
ケント・ギルバートカリフォルニア州弁護士・タレント

 2週間後に迫った米大統領選で政権奪還を目指す共和党は今回、ミット・ロムニーマサチューセッツ州知事を正式候補に指名した。彼は4年前の大統領選にも挑戦したが、少数派宗教である末日聖徒イエス・キリスト教会モルモン教)の教徒であるため反発を受け、党内の予備選で撤退を余儀なくされた。その彼がいま「オバマ大統領に勝てる候補」として党の期待を一身に背負っている。候補者の宗教を大統領選びのリトマス試験紙にする時代がようやく終わったことを、同じモルモン教徒である私は肯定的に受け止めている。
 私はモルモン教徒が人口の6割を占める米西部ユタ州で育ち、19歳で宣教のため来日した。現在の教徒数は日本に13万人、米国に600万人、全世界では1300万人に上る。この総数はユダヤ教の人工に匹敵する。
 しかしキリスト教プロテスタントカトリックが大勢を占める米国で、モルモン教は長く異端扱いされてきた。ひとつには「神・キリスト・聖霊」を三位一体ではなく三位三体と捉えることや、生ける預言者が実在することなど、教義上の違いに由来する。1890年まで一夫多妻制を容認していたため、その名残でカルト教団呼ばわりもされた。だが実際に一夫多妻制だった教徒は全体の2%に過ぎない。またモルモン教会は評議会組織であり、例えば預言者である大管長が間違った行為をしたら、破門できる制度もある。教祖の暴走を許すカルトと同一視するのは間違いだ。
 モルモン教を毛嫌いするのは、共和党支持者の中でも最も保守的なキリスト教福音主義者だ。彼らが4年前の反省を生かし私情を捨て、共和党勝利という大義のもと一枚岩になれば、本選でもロムニー氏の勝利が現実味を帯びてくる。
 今回の選挙で問われるのは政府の役割の大きい・小さいと、人工妊娠中絶や同性婚の是非だ。それらの選択肢が、有権者の判断を左右するリトマス紙に取って代わった。モルモン教徒には、民主、共和両方の党員がいるので、教会が支持政党を表明することもなければ、政治献金をすることもない。日本のメディアでロムニー氏の選挙資金が教会から出ているとの報道があったが、政教分離の観点からもありえないことだ。【構成・朴鐘珠
    −−「ViewPoint 宗教がリトマス紙の時代は終わった=ケント・ギルバート」、『毎日新聞』2012年10月22日(月)付。

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モルモン教に対して神学者としていちもつは全くありませんし、ロムニー支持でもありませんが、ひとつの認識の事例として紹介しておきます。




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