覚え書:「今週の本棚:『未解決の戦後補償』=田中宏・中山武敏・有光健ほか著」、『毎日新聞』2012年10月28日(日)付。


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今週の本棚:『未解決の戦後補償』
田中宏・中山武敏・有光健ほか著
(創史社・1890円)

 「大東亜共栄圏」を掲げた大日本帝国の戦争は、国内外に禍根を置き去りにした。被害者や遺族たちは戦争が終わって67年たった今も、補償や謝罪を求めて闘っている。
 アジアでは「慰安婦」や「強制連行」に加え、日本軍が中国に遺棄した毒ガスで被害にあった人たち。国内では東京大空襲の被害者。本書では、支援者や裁判の弁護士などが事例の経緯と展望を伝えている。
 補償問題は国同士の条約などで解決済み、というのが日本政府の原則的立場だ。司法は「戦争被害受忍論」つまり「戦争でみんな被害にあったのだから、みんなでがまんすべき」という法理を振りかざしてきた。司法から解決をうながされた立法府の、救済への動きも鈍い。
 前進している例もある。一昨年、ソ連による抑留被害者に日本政府が特別給付金を支給する「シベリア特措法」が施行された。だが、「日本人」として抑留されながら、その後、韓国や台湾籍をとった人たちは補償対象者から除外された。
 副題は「問われる日本の過去と未来」。未解決の戦後補償問題とどう向き合うべきか、考えるきっかけになる。(栗)
    −−「今週の本棚:『未解決の戦後補償』=田中宏・中山武敏・有光健ほか著」、『毎日新聞』2012年10月28日(日)付。

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未解決の戦後補償―問われる日本の過去と未来
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創史社
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