覚え書:「今週の本棚:『僕の知っていたサン=テグジュペリ』=レオン・ウェルト・著」、『毎日新聞』2012年11月18日(日)付。
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今週の本棚:『僕の知っていたサン=テグジュペリ』=レオン・ウェルト・著
(大月書店・2100円)
「小さな男の子だった時のレオン・ウェルトに」−−。この一節にハッと思い当たる人は少なくないのではないか。本書の著者は、サン=テグジュペリの『星の王子さま』冒頭にある献辞の相手なのだ。
2人は無二の親友だった。ドイツによるフランス占領の時代、コルシカ島から出撃したサン=テグジュペリの偵察機は、地中海上空で消息を絶つ。ニュースが伝えられた1944年8月9日のウェルトの日記には「彼が死んだことを思うこと、それは彼を疑うことであり、彼を裏切ることだ」とある。沈痛な思いがにじむ。
サン=テグジュペリがウェルトに宛てた手紙が印象深い。『星の王子さま』でおなじみの絵とともに、出撃前のひととき、再会を切望する言葉が添えられる。「48時間の休暇をもらったしがない軍人が一食の自費を請うています……」
本編では、批評家ウェルトが未完の遺稿『城砦』を論じる。亡き友との「中断された対話」を再開するかのように。サン=テグジュペリの温めた思想が浮かび上がる。
池澤夏樹氏の巻頭エッセイと詳細な脚注がより深い理解へと導いてくれる。=藤本一勇訳(卓)
−−「今週の本棚:『僕の知っていたサン=テグジュペリ』=レオン・ウェルト・著」、『毎日新聞』2012年11月18日(日)付。
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