覚え書:「今週の本棚:無縁介護=山口道宏・編著」、『毎日新聞』2013年01月27日(日)付。


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今週の本棚:無縁介護
山口道宏・編著
現代書館・1680円)

 世界最速級で高齢化が進む中、身寄りもなく、誰にも知られずひっそり死んでいく孤独死(無縁死)が増えている。福祉を受けるには、自ら申請しないと役所が動かない問題を『申請主義の壁!』で告発した山口氏は、社会から孤立して声も出せず、福祉サービスにたどり着けない「無縁介護」が無縁死を誘うと訴える。
 下血し、血の海の中で孤独死していた86歳の男性。家族から放置され、「ラーメンが食べたい」との願いもかなわず死んでいったおじいちゃん……。現場に徹したルポである。「網の目にかからなかった」と釈明する縦割り行政への厳しい目線が全編を貫く。申請主義の限界を指摘し、行政と介護事業者の連携不足や社会保障費の抑制路線に警鐘を鳴らす。
 かつて、日本には「家族福祉」「企業福祉」があった。しかし、高度成長に伴う核家族化を経て、今や4分の1は単身世帯。終身雇用制が崩れ非正規化が進む職場では「縁」など生まれようもない。ワーキング・プアが600万人に達する貧困化は家族解体にも拍車をかけた。ゆくゆくは65歳以上が人口の4割に達する状況下で、「私だけは大丈夫」とは言い切れない状況を描いている。(啓)
    −−「今週の本棚:無縁介護=山口道宏・編著」、『毎日新聞』2013年01月27日(日)付。

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無縁介護―単身高齢社会の老い・孤立・貧困
山口 道宏
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