覚え書:「今週の本棚:アウンサンスーチー 愛と使命=ピーター・ポパム・著」、『毎日新聞』2013年02月10日(日)付。




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今週の本棚:アウンサンスーチー 愛と使命
ピーター・ポパム著

明石書店・3990円)

 スーチーさんは今年六月十九日に六八歳になる。生涯の三分の一近くの自宅軟禁などで自由を奪われながら、ビルマ民主化の象徴的リーダーとしてようやく国際舞台にも登場し、政治活動が注目される(彼女は軍事政権によるミャンマーという国名を使用しない)。著者は英国『インデペンデント』紙の記者。5年間にわたり数多くの関係者にインタビューを重ね、毎日新聞連載「ビルマからの手紙」も活用し、クジャクがはばたくように民主主義を求めて生きてきた彼女の精神の深部に迫り、説得力のある大著となっている。
 不自由な軟禁生活中、スーチーさんは仏教の教えに基づく瞑想に多くの時間をさいた。そこから導き出されたのが、慈しみの心であり、非暴力を掲げて戦う精神だと説く著者の着眼は新鮮だ。英国人の夫がオックスフォードで死を迎えようとしている時、出国すれば二度と母国に戻れなくなると覚悟し、国民に対する慈しみの心を優先して過酷な運命に耐えた経緯を綴ったレポートも読ませる。翻訳は宮下夏生、森博行、本城悠子。宮下さんは若き日のスーチーさん一家の英国滞在中から親交があり、ビルマ支援運動にも関わる。(義)
    −−「今週の本棚:アウンサンスーチー 愛と使命=ピーター・ポパム・著」、『毎日新聞』2013年02月10日(日)付。

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アウンサンスーチー 愛と使命
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