覚え書:「今週の本棚:孤独死 被災地で考える人間の復興=額田勲・著」、『毎日新聞』2013年03月10日(日)付。




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今週の本棚:孤独死 被災地で考える人間の復興
額田勲・著
岩波現代文庫・1218円)

 東日本代審査から2年を経た今もなお、仮設住宅に単身で住む多くの被災高齢者が、「孤独死」の不安にさらされながら暮らしている。震災で表面化した問題の底流には、現代社会が抱える深刻な貧困があるのだと、本書は訴えかけてくる。
 孤独死とは何か。著者は「孤立、失職、慢性疾患が相乗する現代の低所得者層において発生する」と規定する。1995年の阪神大震災でも孤独死が問題になった。校米紙の仮設住宅に診療所を設け、被災者を長年診てきた医師として「同じ悲劇が繰り返される」との危機感は強い。
 低所得者層は災害弱者になりやすい。被災による死亡リスクに加え、その後も明日すら見通せない不安にさいなまされる。だが、超高齢社会で低所得者が増え続ける中、孤独死は被災地のみの特殊な現象ではない。
 著者は昨年、72歳で病没した。本書は99年に刊行された単行本の内容に、東日本大震災後に執筆された遺稿などを加えた新編集版。被災地が「人間の復興」を遂げるために、社会全体が孤独死の問題に真正面から向き合うことを求めている。被災地医療にこだわり続けた著者の遺言とも言えるだろう。(河)
    −−「今週の本棚:孤独死 被災地で考える人間の復興=額田勲・著」、『毎日新聞』2013年03月10日(日)付。

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