覚え書:「今週の本棚・新刊:『小さき 愛らしきもの』=田島充・著」『毎日新聞』2013年05月26日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『小さき 愛らしきもの』=田島充・著
毎日新聞 2013年05月26日 東京朝刊
(生活の友社・1890円)
ひと昔前、「大きいことはいいことだ」という流行語があった。ことわざでは「大は小を兼ねる」。美術展においても「大作」が注目されがちだ。
だが、東京・六本木で半世紀近く古美術商を営んできた著者は、『枕草子』で清少納言が説いた「なにも なにも 小さきものは みな美し」という言葉に共感してきた。本書は、東アジアの仏教美術や古陶磁、金工、ガラスなど、長く手元で大切にしたり取り扱ったりしてきた掌中の逸品148点を紹介している。
笑みをたたえた頭部の埴輪(はにわ)は高さ7・9センチ。市松模様のモダンな棗(なつめ)は高さ4・8センチ。釉薬(ゆうやく)のたまりが美しい高麗白磁の杯は口径5・9センチ。文字通り「手のひらサイズ」の作品ばかり。出しゃばらないのに存在感がある。著者が言う「小さい故に凝縮された美」を確かに感じさせる。
ただ小ぶりであればいいわけではない。そこに、かの白洲正子にも称賛されたという、著者の確固たる美意識がある。小さく存在する「必然性」を見抜く目は、作品写真に添えられた短文からもうかがえる。本自体も縦約18センチ、横約14センチと小ぶりだ。手元に置き、至福のひとときを楽しめる格好の一冊。(け)
−−「今週の本棚・新刊:『小さき 愛らしきもの』=田島充・著」『毎日新聞』2013年05月26日(日)付。
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http://mainichi.jp/feature/news/20130526ddm015070034000c.html