覚え書:「今週の本棚・新刊:『続 日曜日の歴史学』=山本博文・著」、『毎日新聞』2013年05月26日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『続 日曜日の歴史学』=山本博文・著
毎日新聞 2013年05月26日 東京朝刊
(東京堂出版・1680円)
歴史学にとって最も信頼できる一次史料である古文書。博物館の歴史展示でも中核を占めている。しかし、日本語化した漢文だったりして取っつきにくい。この本は、信長、光秀、秀吉、家康の4人の天下人の著名な書状を読解して臨場感のある戦国時代像を構成し、歴史ファンの「古文書開眼」を狙っている。
例えば、信長が宿老・佐久間信盛父子を追放した際の「折檻(せっかん)状」。光秀や秀吉の武勲をたたえる一方、「三十年(中略)無比類(ひるいなき)働申習候儀、一度も有之ましき事(30年間、お前が大した働きだと言われたことは、一度もないだろう)」。武勇を尊ぶ信長の激しい怒りが伝わってくる。
新発見史料も面白い。秀吉が東北で行った厳しい検地と刀狩りは、ホラ話だと軽視されてきた。しかし一昨年、強硬姿勢を裏づける書状が見つかった。違反者をただちに成敗する軍勢を送るため、近江(滋賀県)から白河(福島県)まで、要所に兵糧の倉庫を造らせたというのだ。
読み通すと、とりあえずは「釈文(しゃくもん)」(くずし字を活字にしたもの)への苦手意識が払拭(ふっしょく)されそうだ。文書を音読すれば、戦国武将の性格や息づかいも伝わってくる。(和)
−−「今週の本棚・新刊:『続 日曜日の歴史学』=山本博文・著」、『毎日新聞』2013年05月26日(日)付。
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http://mainichi.jp/feature/news/20130526ddm015070023000c.html