書評:イーヴァル・ロー=ヨハンソン(西下彰俊、渡辺博明、兼松麻紀子訳)『スウェーデン 高齢者福祉改革の原点 ルポルタージュからの問題提起』新評論、2012年。




本書はスウェーデンの老人ホームの現状を批判したヨハンソンの古典的名著『スウェーデンの高齢者』(52年)、『老い』(49年)を翻訳・収録した一冊。原著の写真も一部が収録されている。

高福祉で有名な北欧だがはじめからそうであったわけではない。その成果は勝ち取ってゆく歴史であった。当時の老人ホームは、障害者と同居の現代版姥棄山。前世紀的貧窮院時代の発想のままだった。

ヨハンソンは施設行脚を重ねる中で、施設への隔離主義の問題性を発見する。利用者ができるだけ社会と関わり続ける生活はできないのか。脱施設主義の主張はノーマライゼーションの先駆けといってよいであろう。

私事ながら病院で仕事をするようになり思うのは、施設は必要不可欠であるということ。しかし「そこに入れてしまえば問題は解決する」とは同義ではない。中身の絶えざる検討と共に、「共に生きる」を考えなければならない。






Resize1201

スウェーデン:高齢者福祉改革の原点: ルポルタージュからの問題提起
イヴァル・ロー=ヨハンソン
新評論
売り上げランキング: 791,930