覚え書:「今週の本棚・本と人:『東京国立博物館の名品でたどる 書の美』 著者・島谷弘幸さん」、『毎日新聞』2013年07月28日(日)付。



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今週の本棚・本と人:『東京国立博物館の名品でたどる 書の美』 著者・島谷弘幸さん
毎日新聞 2013年07月28日 東京朝刊



 (毎日新聞社・2415円)

 ◇書は読めなくても楽しめる−−著者・島谷弘幸(しまたに・ひろゆき)さん

 毎日新聞日曜版の連載「書の美」を収めた。日本の書の名品64点を選び、カラー写真と一緒に鑑賞の勘どころを凝縮し解説。一読すれば書の歴史の概略が頭に入る仕掛けになっている。

 「書の魅力を上手に発信したいと思いました。連載が始まり『毎週愛読してる。欠かさずに切り抜いています』といった声が聞こえてきた。だから、前週の内容と関連付けて書くようにもなりました。それにしても、1週間が過ぎるのが早かった」

 1953年、岡山県生まれ。師は故小松茂美さん。東京国立博物館で約30年、日本の書を研究し、現在は同館副館長。

 これほど多くの名品を実際に見てきた人は少ない。今回は、知り尽くした東京国立博物館の所蔵品ばかりをとり上げた。

 「(東博には)つくづく良い書があると実感しました。漠然とではなく、『この書のどこに魅力を感じるのか』と自問自答し新たな発見もありました」

 冒頭に書の見方、巻末に書の伝世についての論考を書き下ろした。連載を信仰、文学、人、近世と四つの章に分け再構成。拡大写真と強く開いても丈夫な造本を採用、手習いに使える。

 「書は読めなくてもいい」という鑑賞への誘いが圧巻だ。

 「私自身、最近書を見る時は『読んで』いません。その書に魅力があるのか最初に考える。たいてい美術館では絵を見た後で画家の名やタイトルを知る。ところが書の場合、掲げられた表示を読んでから書そのものを眺めている。楽しむのではなく勉強になっているんです」

 書を見るポイントとして、全体の調和と書線の重要性について繰り返し力説している。

 「好きか嫌いかを大切にしてその理由を自分に問い掛ければいい。そうして鑑賞の引き出しをたくさん増やしてほしい」

 東博の書はひと月半ごとに展示替えがある総合文化展(通常展示)や特集陳列、特別展に出陳される。本物を見るためのガイドブックにもなった。

 「時空を超え伝わった名品に会いに来てください。書は頭でなく自分の感性で楽しんでほしい。『読むな! 感じろ!』です。書を楽しむヒント、書の魅力のエキスが詰まった本になったと思います」<文・桐山正寿/写真・藤原亜希>
    −−「今週の本棚・本と人:『東京国立博物館の名品でたどる 書の美』 著者・島谷弘幸さん」、『毎日新聞』2013年07月28日(日)付。

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http://mainichi.jp/feature/news/20130728ddm015070025000c.html





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