書評:ジョセフ・ヒース(瀧澤弘和訳)『ルールに従う 社会科学の規範理論序説』NTT出版、2013年。



ジョセフ・ヒース『ルールに従う 社会科学の規範理論序説』NTT出版、読了。テーマはずばり「なぜ人は、利己的に振舞うのではなく規範・制度・道徳に従って行動し、そのような社会を維持できるのか」ということ。本書は哲学の古典的テーマを経済学から進化生物学に至るまで先端研究を踏まえ考察する。

形而上学的徳論への嫌悪は、期待効用理論の対等を招き、人間の道徳的行動の根拠を考察することを弱体化させた。しかし筆者によれば道徳こそ人間の合理性の根拠であり、単純に形而上学と同一のものではない。それは時間をかけて抽出された人工物である。

「ルールに従う」ことは、相対的な文化に依存する。これを限界ととらえるべきか。著者は、異文化間においても、相互作用によって道徳的規範のシステムを変化させることができると見る。哲学史の伝統を踏まえながら概念を一新する「社会科学を統合する新しい試み」。

ジョセフ・ヒース(瀧澤弘和訳)『ルールに従う 社会科学の規範理論序説』NTT出版 ルールに従う 社会科学の規範理論序説|書籍出版|NTT出版 道徳性こそ合理性の根本に存在する。社会科学において重要である「ルール遵守」の問題について、哲学、社会心理学、進化理論、社会学や経済学の知見を用いて規範理論を構築する









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