書評:高倉浩樹、滝澤克彦編『無形民俗文化財が被災するということ 東日本大震災と宮城県沿岸部地域社会の民俗誌』新泉社、2014年。




高倉浩樹、滝澤克彦編『無形民俗文化財が被災するということ 東日本大震災宮城県沿岸部地域社会の民俗誌』新泉社、2014年、読了。本書は東日本大震災によって被害を受けた宮城県下の無形民俗文化財の被災とその復興をまとめた20人の研究者による報告。難題に向き合う民俗文化の現状を浮き彫りにする。 

「形のない文化財が被災するとは」(帯)、新しい担い手の育成や環境整備で済むものではない。震災による変化は、無形の民衆文化自体をも「変化」させている。その挑戦は、単なる復活・再開というより緊張に満ちた創造的営みである。

本書は多様な無形文化財の有り様を報告するが、それは同時に宮城県の多彩な民衆文化の奥深さと人間に対する重みを思い知らせてくれる。そしてその努力こそ、日常を取り戻す力の源泉になっている。人間の「協同」を一新する好著。


平田オリザさんの『新しい広場をつくる―市民芸術概論綱要』(岩波書店)にて女川町の獅子舞がコミュニティ再生の原動力になっているとの報告に興味を持ち手に取りました。安倍晋三閣下は「心の復興」などと宣い「君が代」を流して「絆」でまとめようとしておりますが、こういう頸木で共同体再生ではない、選択こそ、コミュニティの新生であり、そこに「積極的平和主義」もあるのじゃないかなあと思ったり。





無形民俗文化財が被災するということ


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