覚え書:「書評:暴露 スノーデンが私に託したファイル グレン・グリーンウォルド 著」、『東京新聞』2014年07月13日(日)付。

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暴露 スノーデンが私に託したファイル グレン・グリーンウォルド 著

2014年7月13日

◆ネットで世界の秘密握る
[評者]吉田司=ノンフィクション作家
 インターネットは「人間に自由を与える」反権力的なツールで、プライバシーを尊重する「匿名性の高い」電子空間だと長いこと信じられてきた。しかし、その神話はもう通用しない。アメリカ国防総省所属、軍部直轄の諜報(ちょうほう)機関NSA(国家安全保障局)が全世界のEメールや携帯データを大量無差別に傍受・収集し“汚れたスパイ活動”を行っていた実態を、元CIAサイバー工作員エドワード・スノーデンが「暴露」(内部告発)したからだ。
 本書によれば、彼がダウンロードした機密文書にはあの<グーグル>や<フェイスブック><アップル><マイクロソフト>などネット関連企業がNSAと秘密協定を結び、ユーザーのオンライン情報を国家権力に売り渡した事実が記録されていた。ネットは今や米軍産複合体に征服され、オーウェルの『一九八四年』も真っ青の人民監視マシーンに変貌したのである。
 本書は、スノーデンの機密暴露事件の全貌を描いたノンフィクション。著者自身も米英諜報機関に逮捕寸前まで追いつめられるスリリングな展開で、手に汗握る。驚くのは、NSAの地球規模の秘密監視システム網の力量である。米国内の全通話インフラ・衛星通信を傍受し、英国の諜報機関と協力して海底の光ファイバーケーブルに盗聴器を仕掛け、ロシアのエネルギー会社<ガスプロム>やドイツ、日本をはじめ、世界各国への経済・貿易スパイ活動を続けているという。「Eメールアドレスさえわかればどんな人間でも監視対象にできる」というのである。
 実際、ドイツのメルケル首相の携帯も盗聴されていたわけだ。案ずるに、日本の首相や自衛隊幹部の弱点・スキャンダル情報を入手するなど朝飯前だろう。もしその秘密監視情報をネタにアメリカが外交圧力を強め自衛隊の海外派兵を要求したら、集団的自衛権行使の国ニッポンの首脳部はNO!と言い切れるのか。背筋が寒くなる。
 (田口俊樹ほか訳、新潮社・1836円)
◆もう1冊 
 ルーク・ハーディング著『スノーデンファイル』(三木俊哉訳・日経BP社)。リーク先となった英紙「ガーディアン」側のリポート。
 Glenn Greenwald 1967年生まれ。米国のジャーナリスト・弁護士。
    −−「書評:暴露 スノーデンが私に託したファイル グレン・グリーンウォルド 著」、『東京新聞』2014年07月13日(日)付。

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