書評:トリン・T・ミンハ(小林富久子訳)『ここのなかの何処かへ 移住・難民・境界的出来事』平凡社、2014年。

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トリン・T・ミンハ『ここのなかの何処かへ 移住・難民・境界的出来事』平凡社、読了。ポストコロニアリズムフェミニズムの代表的映像作家・思想家の手による20年ぶりの評論集。グローバリズムの歓声はその理念と裏腹に領域を分断しつつあるのがその実情。その境界の扉を開く闊達な言葉に驚いてしまう。

本書で彼女が指摘する二元論的思考やできあいの観念への抵抗は取り立てて新しくない。しかし、私はどこに立ち、何が立ちふさがり、その先に何があるのかを考えるうえで、彼女が誘う「境界的出来事」への言葉は、ひととひとが共鳴する優しさと強さを秘めている。

“elsewhere, within here”ここのなかの、何処か別の場所へ。彼女は二項対立の境界線上にたちとどまりながら、ゆさぶってくる。 





ここのなかの何処かへ - 平凡社


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