覚え書:「今週の本棚・新刊:『日本劣化論』=笠井潔、白井聡・著」、『毎日新聞』2014年09月14日(日)付。


2_2


        • -

今週の本棚・新刊:『日本劣化論』=笠井潔白井聡・著
毎日新聞 2014年09月14日 東京朝刊

 (ちくま新書・907円)

 推理・SF小説執筆の傍ら、思想史を踏まえた評論活動をしてきたベテラン作家の笠井潔と、昨年の『永続敗戦論』で話題になった若手政治学者、白井聡。『永続敗戦論』を読んだ際、笠井の前著『8・15と3・11』に認識が大変似ていると感じた。共に、福島第1原発事故を日本の思想と体制の破綻の表れととらえ、笠井は前者を「ニッポン・イデオロギー」、白井は後者を「永続敗戦」レジームと名付けて批判していた。今回の本は、「やはり出たか」と思わせる組み合わせの対談となった。

 戦後日本は、マッカーサーをいわば共産圏に対する「征夷大将軍」とみなした▽今の日本をぎりぎりで戦後民主主義の枠内にとどめているのは左翼が敵と見なしてきたアメリカと天皇制▽今の右傾化した人たちは、もし中国に戦争で負ければ真っ先に対中迎合派になるだろう−−といった刺激的な主張が満載。盛りだくさんの内容の末に、「ニッポン・イデオロギー」や「永続敗戦」体制に依拠しない、主権国家をも超える自立した人間像を描く。親子ほども年齢差のある2人が存分に語り合うことで、私たちのこれからを巡る議論の出発点が見えた。(生)
    −−「今週の本棚・新刊:『日本劣化論』=笠井潔白井聡・著」、『毎日新聞』2014年09月14日(日)付。

        • -

http://mainichi.jp/shimen/news/20140914ddm015070026000c.html





Resize2123

日本劣化論 (ちくま新書)
笠井 潔 白井 聡
筑摩書房
売り上げランキング: 2,180