覚え書:「今週の本棚・新刊:『基準値のからくり 安全はこうして数字になった』=村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生・著」、『毎日新聞』2014年10月19日(日)付。

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今週の本棚・新刊:『基準値のからくり 安全はこうして数字になった』=村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生・著
毎日新聞 2014年10月19日 東京朝刊

 (講談社ブルーバックス・994円)

 「安全」は科学的に説明できるが、「安心」は主観的な感情なので科学とは別物。これが一般的な考え方だ。だが安全とは、「『心配』がない状態であり、そこにはそもそも、心理的な要素が含まれている」として、市民の感情を満足させるのも行政の役割だ、と著者4人は主張する。

 安全に結びつく基準値も、実は科学的な理由だけで決まるわけではなく、時代や歴史、文化など感情的な要素もからむ。たとえば、窒息のリスクはこんにゃくゼリーより餅の方がはるかに高いが、日本の食文化はそのリスクを受け入れている。

 農産物の残留農薬基準は、農家が農薬を適正に使用したかどうかを知る管理目安であり、基準を超えたからといって健康リスクが発生するわけではない。水道水や大気中にあるベンゼンなどの発がん性物質の基準値は、10万人に1人くらいの発がんリスクはやむを得ないという仮定で設定されている。

 生物を守る基準でも、指標が魚のコイかミジンコかで大きく異なる。基準値にまつわるさまざまな例を挙げながら、「基準を超えたら危険」という考え方がいかに思考停止な発想かを教えてくれる。(小)
    −−「今週の本棚・新刊:『基準値のからくり 安全はこうして数字になった』=村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生・著」、『毎日新聞』2014年10月19日(日)付。

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http://mainichi.jp/shimen/news/20141019ddm015070020000c.html





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