拙文:「読書:人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎著(東京大学出版会)」、『聖教新聞』2014年10月25日(土)付。

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読書
人は時代といかに向き合うか
三谷太一郎 著

永遠なるものを射程に収める

 政治史の大家が「時代と向き合い歴史を学ぼうとするすべての人々」に贈る歴史との対話−−近代日本の軌跡をたどる本論集は、さながら考えるヒントの玉手箱だ。
 近代日本の歩みとは、脅迫にも似た成長願望とその挫折の繰り返しである。著者は3・11の大震災を幕末以来の日本の「一国近代化路線の終わり」と捉える。それは「日本の近代を導いてきた『文明開化』・『富国強兵』のスローガンの方向指示の効力を最終的に失ったことを意味する」との歴史認識だ。
 「『人』は歴史を書くことによって、あるいは歴史を読むことによって、すなわち『時代』を認識することによって、はじめて『時代』を超えるのである」
 日本人はさまざまな「戦後」を検討すること、すなわち?時代と向き合う?ことを怠ってきた。本書はそのことをありありと浮かび上がらせる。白眉は、本来別のものである「人」と「歴史」の交差を描く著者の人物論であろう。吉野作造南原繁らの時代の超え方は示唆に富む。
 本書は1988年に刊行された『二つの戦後』(筑摩書房)に12編を加えて再編したもの。『学問は現実にいかに関わるか』(東京大学出版会)の続編に当たる。一読して驚くのは、30年以上前に書かれた文章を収録していながら決して色あせていないことである、歴史との縦横な対話は、歴史主義への惑溺を退けつつ、永遠なるものを射程に収めている。 (氏)
東京大学出版会・3132円
    −−「読書:人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎著(東京大学出版会)」、『聖教新聞』2014年10月25日(土)付。

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