拙文

拙文:「読書 小林公ニ『アウシュヴィッツを志願した男』講談社 “巨悪”に抗い続けた生涯」、『聖教新聞』2015年07月25日(土)付。

- 読書 アウシュヴィッツを志願した男 小林公ニ 著“巨悪”に抗い続けた生涯 ナチスの絶対悪の象徴であるアウシュヴィッツ絶滅収容所。生還者の一人プリーモ・レーヴィが「人間であることの恥辱」と読んだ過酷な世界に自ら志願した人間がいる。ポーランド軍大…

拙文:「読書 ポール・ロバーツ(東方雅美訳 神保哲生解説)『「衝動」に支配される社会』ダイヤモンド社 社会制度が自己崩壊する恐れ」、『聖教新聞』2015年06月27日(土)付。

- 読書 「衝動」に支配される世界 ポール・ロバーツ著 東方雅美訳 神保哲生解説社会制度が自己崩壊する恐れ 『石油の終焉』と『食の終焉』の両著作で現代社会の病理を浮き彫りにしたジャーナリストによる“終焉シリーズの総決算”の一冊だ。 「欲しい」という…

拙文:「読書:中嶋洋平『ヨーロッパとはどこか』吉田書店 統合の理想と現実を綴る」、『聖教新聞』2015年05月23日(土)付。

- 読書ヨーロッパとはどこか 中嶋洋平 著統合の理想と現実を綴る ユーラシア大陸の西端の狭い一角に、数多くの主権国家がひしめくヨーロッパ−−複雑な国境線を超えた一つのまとまりとして理解されている。なぜなら、現代世界を規定する理念と仕組みの全ては国…

拙文:「読書:中田整一『ドクター・ハック』平凡社 戦中、日米間の和平工作に奔走」、『聖教新聞』2015年04月25日(土)付。

- 読書ドクター・ハック 中田整一 著戦中、日米間の和平工作に奔走 戦前・戦中日本の行く末を決定付ける局面に必ずその姿を現わすのが、ドイツ人エージェント、ドクター・ハックことフリードリヒ・ハックだ。 女優・原節子のデビュー作となる日独合作映画「…

拙文:「読書 大賀祐樹『希望の思想 プラグマティズム入門』筑摩選書 連帯と共生への可能性を開く」、『聖教新聞』2015年03月28日(土)付。

- 読書 希望の思想 プラグマティズム入門 大賀祐樹 著連帯と共生への可能性を開く 現代思想の諸潮流の中でプラグマティズムほど不当な扱いを受けたものはない。実用主義の訳語は早計すぎて“浅い”という印象をあたえる。著者はパース、ジェイムズ、デューイと…

拙文:「読書 小川仁志、萱野稔人『闘うための哲学書』講談社 思索の言葉めぐる対談集」、『聖教新聞』2015年02月28日(土)付。

- 読書 闘うための哲学書 小川仁志、萱野稔人 著思索の言葉めぐる対談集 プラトンやデカルトといった古典的著作からフーコーやロールズなど思想史を刷新する現代の名著まで22冊の哲学書を取り上げ、気鋭の哲学者2人が、その魅力を縦横に語った対談集であ…

拙文:「書評 伊藤貴雄『ショーペンハウアー 兵役拒否の哲学 戦争・法・国家』(晃洋書房)」、『第三文明』第三文明社、2015年3月、92頁。

- 書評 『ショーペンハウアー 兵役拒否の哲学 戦争・法・国家』 伊藤貴雄著 晃洋書房 本体4,100円+税今読むべき、国家の論理をしなやかに撃つショーペンハウアー 近代西洋の哲学史においてショーペンハウアーほど不当な誤解を受けた哲学者は稀であろう…

拙文:「読書 『棲み分け』の世界史 下田淳 著」、『聖教新聞』2015年01月31日(土)付。

- 読書 「棲み分け」の世界史 下田淳 著 西洋文明が発展した背景 文明として後発のヨーロッパがなぜ近代以降、一人勝ちすることが可能になったのか。それはサイエンスと資本主義の論理をいち早く獲得したことによるという。本書は「棲み分け」をキーワードに…

拙文:「読書:坂野潤治『の日本近代史』講談社 平等を無視し崩壊した民主主義 氏家法雄・評」、『公明新聞』2015年01月26日(月)付。

- の日本近代史 坂野潤治 平等を無視し崩壊した民主主義 東洋哲学研究所委嘱研究員 氏家法雄・評 著者は近代日本に内在する民主主義の豊かな思想を丹念に掘り起こし、その透徹した実証的なリアリズムで政治史の認識を一新してきた。本書はその「自前のデモク…

拙文:「読書:井上順孝編『21世紀の宗教研究』平凡社 刺激に富む先端科学との邂逅」、『聖教新聞』2014年11月22日(土)付。

- 読書 21世紀の宗教研究 井上順孝編 刺激に富む先端科学との邂逅 「科学的」という評価が合理的な価値あるものと見なされる現代。その対極に位置するのが宗教だ。宗教を迷信と捉えず、「宗教とは何か」を科学的に探究するのが宗教学の出発だったが、学の…

拙文:「読書:人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎著(東京大学出版会)」、『聖教新聞』2014年10月25日(土)付。

- 読書 人は時代といかに向き合うか 三谷太一郎 著永遠なるものを射程に収める 政治史の大家が「時代と向き合い歴史を学ぼうとするすべての人々」に贈る歴史との対話−−近代日本の軌跡をたどる本論集は、さながら考えるヒントの玉手箱だ。 近代日本の歩みとは…

[書評][評伝][仏教思想史][大学論][学問論][現代仏教][日本思想史][日本宗教史][神学][宗教学]拙文:「書評 『仏教学者 中村元 求道のことばと思想』植木雅俊著」、『第三文明』第三文明社、2014年11月、96頁。

- 書評 『仏教学者 中村元 求道のことばと思想』 植木雅俊著 角川選書 定価1,800円+税“本物の思想家”の学究の歩み 鮮やかに描き出す 卓越した専門性を持ちながらも万学に通じた「本物の思想家」は、百年に一人か二人、存在する。中村元もそうした「本…

拙文:「読書 宗教とグローバル市民社会 ロバート・N・ベラー、島薗進、奥村隆編・岩波書店」、『聖教新聞』2014年09月27日(土)付。

- 読書 宗教とグローバル市民社会 ロバート・N・ベラー、島薗進、奥村隆編偏狭な国家主義への憂慮 一昨年秋、宗教社会学の巨人ロバート・ベラーは85歳の恒例にもかかわらず来日し、立教大学などで精力的に講演した。本書は、その講演・シンポジウムの内容…

拙文:「書評:南原繁研究会編『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』 南原繁に学ぶ『現実』を『理念』に近づける営み」、『第三文明』2014年10月、第三文明社、94頁。

- 書評 『南原繁と国際政治 永久平和を求めて』 南原繁研究会編 EDITEX 定価2,000円+税南原繁に学ぶ「現実」を「理念」に近づける営み 先哲の思索に学ぶとは一体どういうことだろうか。それは無批判にありがたく御輿(みこし)を担ぐことでもな…

書評:「読書:『アダム・スミスとその時代』ニコラス・フィリップソン・著、永井大輔・訳、白水社」、『聖教新聞』2014年08月23日(土)付。

- 読書 アダム・スミスとその時代 ニコラス・フィリップソン・著 永井大輔・訳近代経済学の父の生涯と思想 近代経済学の父=アダム・スミスの最新の評伝である。その生涯と思想をバランスよく叙述する本書は、大部の著作ながら一気に読み通すことができる。 …

拙文:「書評 『アジア主義 その先の近代へ』 中島岳志著 潮出版社」、『第三文明』9月、第三文明社、2014年、98頁。

- 書評 『アジア主義 その先の近代へ』 中島岳志著 潮出版社 定価1900円+税「思想としてのアジア主義」の可能性 アジア主義とは国家を超えたアジアの連帯を模索する戦前日本の思想的営みと実践のことだが、日本思想史においては、これほど罵倒にみまれ…

拙文:「読書 社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト著」、『聖教新聞』2014年07月26日(土)付。

- 読書 社会はなぜ左と右にわかれるのか ジョナサン・ハイト著 高橋洋訳まず直観に基づく道徳的判断 道徳的判断を下す際、それは直観ではなく理性によって導かれると、普段、私たちは考えるが、実際には逆らしい。 本書は膨大な心理実験から「まず直観、それ…

書評:「読書 人間にとって善とは何か=フィリッパ・フット著 筑摩書房」、『聖教新聞』2014年06月28日(土)付。

- 読書 人間にとって善とは何か フィリッパ・フット著 高橋久一郎 監訳 河田健太郎・立花幸司・壁谷彰慶訳全人性の理解促す思索が光る 学問のあり方が見直された20世紀、最も批判を受けたのは哲学だ。諸学の王の特権性は反省されるべきだが、根源的な探究態…

拙文:「書評 ハンナ・アーレント 矢野久美子・著」、『聖教新聞』2014年05月24日(土)付。

- 書評 ハンナ・アーレント 矢野久美子著自分で「考える」契機生む 20世紀を最も真摯(しんし)にかつ激しく生き抜いた女性哲学者の代表こそハンナ・アーレントであろう。 ユダヤ人ゆえにドイツから亡命し、人間を「無効化」する全体主義と対決した。『全…

書評:拙文「車浮代著『蔦重の教え』(飛鳥新社)」、『第三文明』2014年5月、95頁。

- 書評 『蔦重の教え』 車浮代・著 飛鳥新社・1600円+税「人生の勘どころ」は足下にあり−−蔦屋重三郎に学ぶ「人間学」 困難にぶつかり、全てが堂々巡りするとき、少しだけものの見方を変えてみるだけで、案外うまくいくことは多い。それは、ドアを押すのか…

書評:「國分功一郎著『来るべき民主主義』(幻冬舎)」、『第三文明』2014年2月、69頁。

- 書評『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』國分功一郎・著幻冬舎新書・819円民主主義を引き寄せよう! 「参加する社会」の構想 本書は、哲学者の著者が、小平市都道328号線の反対運動に加わったことをきっかけにして「現在の民…

書評:「山形孝夫著『黒い海の記憶』(岩波書店)」、『第三文明』2013年10月、86頁。

- 書評『黒い海の記憶 いま、死者の語りを聞くこと』 山形孝夫・著 岩波書店・2,100円死者を記憶し、死者に向き合う「新しい霊性」 「泣くこと」も「死者と語り合うこと」も現代人にとっては禁忌(きんき)の対象であろう。バラエティー番組のオカルト趣味は…

書評:「里村欣三顕彰会編『里村欣三の眼差し』(吉備人出版)」、『第三文明』2013年5月、95頁。

- 書評 『里村欣三の眼差し』 里村欣三顕彰会編吉備人出版・2940円果敢に抵抗したヒューマニズム作家の実像 プロレタリア作家として活躍したのち、従軍作家として唯一戦死した文学者である「里村欣三ほど誤解され忌避(きひ)された作家は、この国の文学…

書評:「山口周三『南原繁の生涯 信仰・思想・業績』(教文館)、『第三文明』2013年3月、96頁。

- 「現実的理想主義者」の実像を生き生きと伝える 近代日本の思想的系譜において、良心と良識を担うチャンピオンは内村鑑三と新渡戸稲造である。この二人の師から直接の薫陶を受けたのが本書の主人公・南原繁である。戦後初の東大総長として教育改革を指揮し…

書評:「植木雅俊『思想としての法華経』(岩波書店)、『第三文明』2013年2月、95頁。

- 法華経の神髄をえぐりだし、研究史を画する一書 著者は、サンスクリット原典から『法華経』、『維摩経』の画期的な訳業を世に送り、その明晰(めきせき)な訳文と創意に富む訳注は仏教学に新たな息吹(いぶき)を吹き込んだことで知られる。 本書は、これ…

書評:「吉野孝雄『宮武外骨伝』(河出文庫)、『第三文明』2012年9月、92頁。

- 吉野孝雄『宮武外骨伝』河出文庫権力と戦った“操觚者”の稀有なる魂の軌跡 本書の主人公・宮武外骨(がいこつ)ほど型破りな人間はそうそう存在しない。反骨のジャーナリスト、著述家、明治文化・風俗史・新聞雑誌研究家……。巨人を形容するには、どれも不足…

書評:安田浩一『ネットと愛国』(講談社)、『第三文明』2012年8月、第三文明社、92頁。

書評:安田浩一『ネットと愛国』(講談社)、『第三文明』2012年8月、第三文明社、92頁。 - 「憎悪に満ちた集団の闇をえぐる」 インターネットで排外的な言動を展開する「ネット右翼」と呼ばれる人々が結成した「市民保守団体」の一つが「在特会(在日特権…

拙文「書評 『一般意志2.0』東浩紀著」、『第三文明』2012年3月、第三文明社、92頁。

- 書評 『一般意志2.0』東浩紀著 熟議民主主義を補完する「アップデート」という試み 「民主主義」という言葉を耳にすると、普遍的な理念だとは思うものの、その現状に軽蔑と失笑を禁じ得ないのは評者だけではないだろう。しかし「民主主義オワタ(終わっ…