書評:尾崎行雄『立憲主義の日本的困難 尾崎行雄批評文集1914―1947』書肆心水、2014年。

1




尾崎行雄立憲主義の日本的困難 尾崎行雄批評文集1914―1947』書肆心水、読了。一貫して立憲主義の理想を掲げ、藩閥金権政治を批判した尾崎行雄。本書はその批評をまとめたもの。一読すると、古くて根深い日本の反立憲主義的心性との闘いが「憲政の神様」の歩みであったことが理解できる。

義務と権利において「台閣の宰相と田野の匹夫との間に、何の軽重厚薄もない」、「ただ一貫したる道理によってのみ支配せられる」−−。尾崎は、道理の支配こそ立憲政治の精神であり、「腕力・金力による」支配を反立憲主義として対置する。大日本帝国憲法とて例外ではない。

「腕力・金力による」支配とは、藩閥・官僚主導の強引なやり方だけではない。国政に参加する選挙民の、やれ「鉄道を引け」の如き情実心理も例外ではなく、その心性に、戦前日本の議会政治が立憲政治を確立できなかった「日本的困難」さを読みとる。党派の論理は、権力の側に「だけ」あるのではない。

「新憲法を祝す」尾崎は再び「立憲主義の再建」を説く。制度的確立だけで立憲主義は保障され得ない。有権者の意識変革(道理の支配)こそ何よりも必要不可欠なのだ。藩閥型独裁的政治が回帰する今、尾崎の批評に耳を傾け、床屋政談の前に認識を更新したい。








Resize0500