覚え書:「【読む人】記者の一冊 松井久子編『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』岩波書店」、『東京新聞』2014年12月21日(日)付。


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【読む人】
記者の一冊
『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』
松井久子編

闘う勇気くれる
 安倍晋三首相が「女性の活躍」を言いだした時、うんざりした。「活躍」って何? どうして上から目線? ある集会で、非正規雇用の女性がたまりかねたように叫んだ。
 「もう十分、女性たちは活躍しています!」。その場の大勢の女性が拍手喝采した。
 子どものころから疑問はたくさんあった。親戚が集まる正月、女の私は台所に縛り付けられ、弟はいとこたちと遊び回る。けんかして男子と一緒に先生に怒られた時は、私だけ説教に「女でしょう」が加わる。表向き募集していたのに「総合職では女性は採用しない」とのたまった電機メーカー。後に倒産したが。
 おかしいと思いつつ、強固な男社会の価値観を無意識に取り込み、振る舞い方を学ぶ。程度の差はあれ、大部分の女性はそうやって生きていると思う。その抑圧を放置して「活躍しろ」って、何なの?という、もやもやした怒りをこの本は整理してくれる。四十年前から今に至るまで、自分らしくあろうともがき、格闘したフェミニストと呼ばれる女性たちのインタビュー集だ。問題の根深さと、自由であること、たたかう勇気を教えてくれる。岩波書店・一五一二円。(柏崎智子)
    −−「【読む人】記者の一冊 松井久子編『何を怖れる フェミニズムを生きた女たち』岩波書店」、『東京新聞』2014年12月21日(日)付。

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