覚え書:「ひと:遠藤美幸さん 『戦場体験』を聞き続ける」、『朝日新聞』2015年01月14日(水)付。

A

        • -

ひと:遠藤美幸さん 「戦場体験」を聞き続ける
2015年1月14日

 もともと戦争には全く興味がなかった。

 きっかけは2001年夏。日本航空の客室乗務員を経て結婚、子育てをしながら慶応大大学院で英国史を研究していた時だ。日航時代に機内で声をかけられ、親しくなった日航OBから、突然、段ボール箱が送られてきた。

 4万人の中国軍に包囲され、日本軍1300人が全滅した1944年の中国雲南省の「拉孟(らもう)戦」での日誌や写真が入っていた。OBは空中補給を担当した飛行隊長だった。「壮絶な玉砕戦があったことを後世に伝え残してほしい」という手紙に背中を押された。

 軍隊用語も階級も知らず、一から教えを請い、生き残った元将兵ら約30人を尋ね歩いた。大学の非常勤講師のかたわら、戦友会の世話人をするなどつき合いを深め、血と汚物にまみれた死体の中での戦いや、前線にあった慰安所のことなど生々しい証言を集めた。

 昨年、「『戦場体験』を受け継ぐということ」(高文研)を出版。13年かけ拉孟戦の実相を明らかにした。90歳を超えた元将兵らの「書いてくれてありがとう」という言葉が何よりもうれしい。

 今年は戦後70年。「戦争は多面的で矛盾に満ちている。すごく難しいが、戦場体験をできる限りリアルに残すことが大切だと思う。自分を消して、耳を傾け続けたい」。残された時間は少ない。

 (文・大久保真紀 写真・西田裕樹)

     *

 えんどうみゆき(51歳)
    −−「ひと:遠藤美幸さん 『戦場体験』を聞き続ける」、『朝日新聞』2015年01月14日(水)付。

        • -

http://www.asahi.com/articles/DA3S11549126.html


12

Resize0846



「戦場体験」を受け継ぐということ
遠藤 美幸
高文研
売り上げランキング: 779