覚え書:「ひと:上橋菜穂子さん 「鹿の王」で本屋大賞を受賞した」、『朝日新聞』2015年04月08日(水)付。

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ひと:上橋菜穂子さん 「鹿の王」で本屋大賞を受賞した
2015年04月08日

 「書店で領収書をもらっても、作家と気付いてくださる方はいません」。知名度がないと謙遜するが、昨年は児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞を受賞。実力は折り紙つきだ。
 受賞作は、前近代を舞台にしたファンタジー。帝国の侵略から故郷を守る戦いに敗れ、奴隷となったヴァンはある日、「野犬」にかまれ、不思議な力を持つ。一方、医術師のホッサルは、移民だけがかかる謎の疫病の治療法を探していた。愛する人や故郷のために奮闘する2人の主人公を通じて、命のはなかさと気高さを描き出した。
 文化人類学者でもある。オーストラリアの先住民アボリジニーの研究を通じて、帝国主義が社会に残した惨禍を考察してきた。本作を書く前に読んだ本で、人間の体内におびただしい数の細菌がせめぎ合いながら生きていることを知った。「人間は、体の内側と外側でよく似たことをしているのではないか」。支配者と被支配者。社会と人体で繰り広げられる二つの「相克」が相似形のように結びつき、今回の作品が生まれた。
 体が弱かった幼少時代、祖母が枕元で聞かせてくれる物語に夢中になった。猫に育てられた子どもや、平家の落人の恩返し、耳底に残った口承のリズムが、少女の胸に作家の夢を育んだ。「書きたいのは、長い間、人類が伝え、愛してきた素朴な物語です」(文・板垣麻衣子 写真・関田航)
    −−「ひと:上橋菜穂子さん 「鹿の王」で本屋大賞を受賞した」、『朝日新聞』2015年04月08日(水)付。

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http://www.asahi.com/articles/DA3S11693522.html


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