覚え書:「沖縄の自己決定権 琉球新報社・新垣 毅 編著」、『東京新聞』2015年07月19日(日)付。

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沖縄の自己決定権 琉球新報社・新垣 毅 編著

2015年7月19日
 
◆歴史に光、独立も視野
[評者]田仲康博=国際基督教大教授
 本書は、琉球新報の連載記事「道標(しるべ)求めて−琉米条約160年 主権を問う」を一冊の本にまとめたものだ。国家を相対化し、その呪縛から抜け出すための「道標」を探る連載が計百回、九カ月半もの永きにわたって続いた。
 民意を踏みにじって新基地建設が強行されている沖縄では、人々がそれぞれの現場で異議申し立ての声を上げている。状況に言葉を与え、さらに状況から抜け出る道を示す本書は、「沖縄問題」の本質を理解する上で示唆に富むものだ。
 本書は前半部で、これまで「日本史」が無視、あるいは誤って伝えてきた「琉球併合」の歴史の細部にまで光を当てる。併合の事実を国内問題として矮小化(わいしょうか)し隠蔽(いんぺい)しようとした明治政府と、それを国際問題化することで各国の支持を得ようとした琉球の立場は真っ向から衝突した。
 琉球・沖縄の近代史は当初から国家の暴力と無関係ではあり得なかったわけだが、そこに大国の思惑が絡まることで、その後の歴史はさらに複雑なものとなった。重要なことはしかし、抑圧の構図が現在も沖縄を縛っていることだ。
 本書はいくつかの打開策を紹介している。自治州から独立まで、その方法は様々だが、自己決定権を求めるという点では一致している。沖縄は不退転の決意で動き始めている。今こそ、国家に翻弄(ほんろう)されてきた歴史に終止符を打つために。
 (高文研・1620円)
 あらかき・つよし 1971年生まれ。琉球新報社文化部記者兼編集委員
◆もう1冊 
 来間泰男著『沖縄の覚悟』(日本経済評論社)。沖縄の経済や独立問題を検討し、米軍基地の撤去を求めた論集。
    −−「沖縄の自己決定権 琉球新報社・新垣 毅 編著」、『東京新聞』2015年07月19日(日)付。

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