日記:ひたすら黙っているか、大賛成するしかない。
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これも他の収容所の例では、収容所内食堂で集団的な反動摘発が行われたり、柱に縛りつけた「反動」に集団で「突撃」して死なせかけた例などがある。こうした体罰は、謙二のいた収容所ではなかったが、精神的な苦痛は大きかったという。
「民主運動では殴りはしないが、内務班のリンチより精神的にはきつかった。内務班では古兵が初年兵を殴るが、殴れば終わりだし、初年兵どうしなら安心だ。しかし民主運動では、反動分子という烙印を押されたら、それが生活すべてについてまわる。いつ誰に摘発されるかもわからない。誰がアクチブで、誰がそうでないかも、はっきりした境目がなかった」
「軍隊では、リンチする側もされる側も、ばからしいと思ってやっていた。ところが反動としてブラックリストに載ると帰国できないかもしれないとなると、ひたすら黙っているか、大賛成するしかない。自分は積極的ではなく、「そうだ、そうだ」と群衆役で叫ぶくらいだったが、とにかく参加していないと自分が反動にされる」
ーー小熊英二『生きて帰ってきた男 ある日本兵の戦争と戦後』岩波新書、2014年、160頁。
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生きて帰ってきた男――ある日本兵の戦争と戦後 (岩波新書)
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