覚え書:「今週の本棚・新刊:『寺山修司からの手紙』=山田太一・編」、『毎日新聞』2015年10月04日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『寺山修司からの手紙』=山田太一・編
毎日新聞 2015年10月04日 東京朝刊
(岩波書店・1836円)
寺山修司(1935−83年)と、数々の名作ドラマを手がけた山田太一氏が大学時代の同級生で、親交を深くしたのは知られている。この本は、寺山の秘書兼マネジャーだった田中未知氏が保管していた二人の未発表書簡を中心に編んだもの。頻繁に手紙をやり取りしたのは、寺山が在学中に腎臓を患い長期入院したためでもあった。まだ戦争の記憶が生々しい1955−58年、貧しい日本で学生に電話は縁遠い時代だ。
論争もあれば、詩やシナリオの断片を思わせる記述もある。砂川闘争など政治の季節を物語る話、恋の話も。それにしても二人が実に多くの本を読んでいたことがわかる。
<本質的なところで、僕は未熟だし、決して皮肉ではなく僕には「いゝ加減さ」がつきまとっている>といった若き寺山の自己分析が読めるのは貴重である。56年12月、一年を振り返って寺山は書く。<新しく知合った人は谷川俊太郎、大岡信、岡井隆、山口洋子、浅利慶太、など>
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彼らの若さが戦後という時代の若さと重なり、幸福な共鳴をなしていたとしみじみ感じる。才気に満ちた青年たちの、きらめくような交友の一端が伝わってくる。(壱)
−−「今週の本棚・新刊:『寺山修司からの手紙』=山田太一・編」、『毎日新聞』2015年10月04日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20151004ddm015070024000c.html