日記:バルメン宣言とアベ政治

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 憲法第九条の問題とも関連して、最後に、日本の行方を主導しようとしている現在の安倍政権の姿勢を見定めて結びとしましょう。
 特定秘密保護法案の強行採決につづいて、矢継ぎ早に、右よりの政策が次々と出されています。こうした問題にみちた法律の積み重ねによって、改正反対の多い憲法第九条を実質的に骨抜きにしていこうとする意図がみてとれます。冒頭に紹介した麻生副首相の推薦するヒトラー改憲の「手口」を実行しているのではないでしょうか。
 特定秘密保護法と連動する政策に、安倍首相のいわゆる「積極的平和主義」があります。それは、平和憲法の「一国平和主義」を脱して集団的自衛権を認め、地球の裏側にまで戦争協力のできる可能性を広げようとするものです。武器輸出禁止の三原則も廃止される方向にあり、戦争することのできる「普通の国」にするのだというのです。
 しかし、こうした政策を「積極的平和主義」と呼ぶのはデマゴギー以外の何ものでもありません。いまでは安倍政権は、中国の脅威を口実にして、集団的自衛権解釈改憲に踏み切ろうとしています。しかし、こうした政策は、《積極的》平和の保障どころか、現実には領海線上の孤島の帰属をめぐる戦闘行為の危険性を高めるだけでしょう。
 とくに最近の国会審議における首相発言にはーーその高揚した気分を反映しているのかーー異常なほどの高飛車な調子が出ています。「立憲主義」を絶対王政時代に主流だった旧い考え方だと片付けたり、集団的自衛権をめぐる野党の質問に答えて、憲法解釈の「最高の責任者は私だ」と言い切ったりしています。巨大与党による安定政権の上に胡座をかいた愚劣な独善的自負が露骨にあらわれているようです。多くの識者は、それを《反知性主義》(佐藤優)と呼んでいます。こんな脳天気な人物によって、いったい、日本はどこへ行くことになるのでしょうか。
 人類全体が互いに依存しあって生きている現代の国際社会では、私たちは、もはや自分の国にたいして無批判なままに暮らすことは許されません。政治や社会の問題にたいして自分自身の意見をもつこと、自分の中に思想・良心の核となる信仰や普遍的な原理をもち、それにもとづいて時の政権の政策にはっきり賛否をあらわす行動に出る責任があるのです。いま問われている《積極的平和主義》とは、戦争することのできる「普通の国」になることではない。むしろ、日本国憲法第九条に代表されるように、武器も手にせず、戦争もしないで新しい平和構築を追求する生き方です。
    ーー宮田光雄『バルメン宣言の政治学新教出版社、2014年、44ー46頁。

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