覚え書:「再生への提言:東日本大震災5年/3 埋もれた魅力発信=気仙沼ニッティング社長・御手洗瑞子氏」、『毎日新聞』2016年03月03日(木)付。

Resize1206

        • -

再生への提言
東日本大震災5年/3 埋もれた魅力発信=気仙沼ニッティング社長・御手洗瑞子氏

毎日新聞2016年3月3日 東京朝刊

御手洗瑞子(みたらい・たまこ)氏

 ヒマラヤの王国ブータンの公務員として働いていた2011年3月に東日本大震災が起き、夏に日本に戻ってきました。仕事の任期が終わったからでもありますが、震災がきっかけで日本に戻ろうと思いました。

 一時、被災自治体のコンサルタントなどに携わり、被災地の産業復興に向けて自分にできることを探し始めました。そんな時、コピーライターなどとして知られる糸井重里さんとお話しする機会があり、「気仙沼で編み物の会社をやりたいけど、社長をやらない?」と誘われました。会社が成り立つのか不安もありましたが、手編み製品なら設備投資はいりません。勝算を考えて足を止めるより、小さくても具体的な一歩を踏み出そう、と引き受けました。

 気仙沼の皆さんと会社設立の準備を始め、編み手を探すためにワークショップを開きました。その時、集まった女性たちが夢中で手を動かしているのを見て、「編み物をしていると心が落ち着くんだ」と思いました。被災者にとって何かに夢中になれる時間は大切だと感じました。

 当初、編み手は4人でしたが、今は「練習生」も含め、主に50−60代の女性が60人。注文を受け、カーディガンやセーターを編んでいます。1点7万円からと高く、インターネット販売ですが、「気仙沼に行って採寸したい」と実際に来られるお客様も多くおられます。編み手は高品質の製品を生み出す「職人」として腕を磨きつつ、喜んで働いてくれているように感じます。

 東北には、いいものがたくさんあります。例えばここに来てみて、岩手の南部鉄器で沸かしたお湯のおいしさに気づきました。手編みの衣類はかつて地元の漁師が着るため、よく編まれていました。埋もれている魅力を見いだして発信すれば消費につながり、地域を支える産業が育ちます。まずは私たち被災地側が、意識を変えることが大切ではないでしょうか。被災地は「支援が必要」というイメージを払拭(ふっしょく)し、「訪ねてみたい憧れの場所」になっていくべきだと思います。【岡礼子】=つづく

 ■人物略歴

 東京都出身。コンサルタント会社勤務などを経て13年から気仙沼ニッティング(宮城県気仙沼市)社長。30歳。
    −−「再生への提言:東日本大震災5年/3 埋もれた魅力発信=気仙沼ニッティング社長・御手洗瑞子氏」、『毎日新聞』2016年03月03日(木)付。

        • -


再生への提言:東日本大震災5年/3 埋もれた魅力発信=気仙沼ニッティング社長・御手洗瑞子氏 - 毎日新聞





Resize1046

Resize0802