覚え書:「書評:民主主義を直感するために 國分功一郎 著」、『東京新聞』2016年05月29日(日)付。

Resize2330

        • -

民主主義を直感するために 國分功一郎 著

2016年5月29日


◆政治参加の姿勢示す
[評者]五野井郁夫=高千穂大教授
 
 民主主義とは何か。若き哲学研究者の國分功一郎は「民主主義とは民衆が権力を作る政治体制」であるという。それは、誰か一部の人々に権力の源泉が集中するのではなくして「集団のメンバー全員に求められる政治体制」のことだ。
 だがわれわれはいまの政治体制において、自分たちが作っているはずの権力が民主主義を脅かしており、むしろ自分は政治の蚊帳の外に置かれていると直感するような事態にたびたび遭遇してきた。
 著者はこうした「率直な直感」こそが大切だと説く。たとえある出来事についての事情に通じていなくても「何かおかしい」と感じたとき、そこから「なぜこうなっているのか」との問いが生じるからだ。哲学においては世界に対して問いを見つけることそれ自体が、この世界へのはたらきかけである。こうした関心の芽生えは、物事の事情を調べて現地に赴くといった、民主主義の政治への能動的参加をわれわれに促すきっかけとなる。
 直感にいざなわれた著者は実際に小平市都市計画道路反対の住民運動辺野古の新基地建設反対運動などの政治の現場を訪れた。そこで人々と対話し政治に積極的にコミットすることで、民主主義についての直感を深めていった。そのような著者の軌跡を綴(つづ)った本書はわれわれに「何をなすべきか」を考えはじめるための有益なヒントを与えてくれるだろう。
 (晶文社・1620円)
 <こくぶん・こういちろう> 1974年生まれ。哲学者。著書『近代政治哲学』など。
◆もう1冊 
 五野井郁夫著『「デモ」とは何か』(NHKブックス)。デモを通じて戦後史をたどり、あるべき民主主義の姿を探る。
    −−「書評:民主主義を直感するために 國分功一郎 著」、『東京新聞』2016年05月29日(日)付。

        • -





http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2016052902000190.html








Resize1770